ダメ出しはヘルシー

昨年の大河ドラマ「べらぼう」では、
蔦屋重三郎が、絵師・喜多川歌麿に
ダメ出しをするシーンが頻繁に描かれていました。
ダメ出しとは言っても、こうすると、
もっと良くなると思うという類のものですが、
それがだいたい無茶なオーダー。
歌麿は「しょうがないなあ、蔦重は」
という感じで引き受けるのですが、
無理をしてでも応えてみると、
明らかに作品が良くなり、
自分も納得する出来になる。
編集者と作家は、いつの時代も、
こうしてお互いを高めあって、
いい作品をつくっていくんだなあと
思いながら観ていました。
ところが、ドラマの中で歌麿は、
蔦重とのタッグを解消し、
他の本屋とのつきあいを始めます。
すでに有名な絵師であった歌麿に
他の本屋はまったくダメ出しをしません。
「すばらしい」
しか言われないことに歌麿は苛立ち、
「なんか、こうしてくれとかないのか」
と言うのですが、返ってくるのは
このままで十分といったコメントばかり。
そして、だんだん作品づくりに
迷いを感じるようになります。
電通若者研究部の調査によると、
高校生、大学生、1~3年目の社会人
計1,200人のうち、
「『本音』を誰かに話すことは、
相手が誰であってもリスクを伴うと感じる」
と回答した人が76.8%いました。
さらに、「仕事での成果よりも、
自分の心の安定を重視して働きたい」
と答えた社会人1~3年目は75.0%。
「職場で何かを成し遂げるよりも、
面倒ごとなく"うまくやる"ことが大事」
と答えた人も77.3%にのぼりました。
べらぼうで、本屋が
歌麿に何も言わなかったのは、
どうすれば良くなるのかという
アイデアが浮かばなかったからかも
しれませんが、
遠慮や忖度もあったのではないでしょうか。
この調査からは、
自分も少しも感情を乱したくないし、
相手の感情を乱すようなこともしたくない。
感情をぶつけ合うのは絶対に避けたい。
そんな若者の姿が見えました。
しかーし、仕事であれ、趣味であれ、
「成長」という視点で考えると、
ダメ出しは必須だと、私は思っています。
いいね!ばかりだと改善されない。
もうちょっとここをこうしたほうが...
という意見は、
成長していくためには必要です。
ダメ出しはたいてい目の前の仕事など、
コトに対して行われるもの。
本来は、人間性を否定するようなものではありません。
でも、人間性そのものを否定されたと思ってしまうので、
「ネガティブなお叱り」になってしまう。
そう捉えず、「ヘルシーなアドバイス」と捉えてみると
いいのではないでしょうか。
そうそう、「ヘルシー」。これです。
イチローが高校野球の練習に立ち会って、
こう言っていました。
今の時代、大人は厳しく指導できない。
子どもたちは、自分で自分に厳しくすることで
成長していくしかない。
それができる子はそういない。大変な時代だ、と。
ダメ出しは心を乱すもの、ではなく、ヘルシーなこと。
そう捉えて、するほうも、されるほうも、
もっと楽な気持ちでポジティブに
成長できる社会であればいいのになあと思います。
