ディレクターの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーです

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その相手には、本当に勝てないのか?

「あの体の小さな子が?」
「あの弱小チームが、まさか!」


弱者が強者を倒すストーリーは痛快で、
いつの時代も大人気です。


ラグビーW杯の南ア対日本戦がまさにこれでした。
日本代表ヘッドコーチであったエディー・ジョーンズが、
その南ア戦の前に読んでインスピレーションを得たという
マルコム・グラッドウェル著の『逆転!』には
いくつもの弱者が強者を倒すストーリーと、
勝利の秘訣が書かれていました。


たとえば、
素人監督率いる弱小女子Jr.バスケットボールチームが
次々に強敵を倒した話。


インドからシリコンバレーに移り住んだ男性が、
娘が所属することになった
バスケットボールチームのコーチをすることになりました。
クリケットとサッカーで育ったこの男性は
バスケットボールの知識ゼロ。
おまけに、チームのメンバーには
初めてバスケットボールをプレーする子が何人もいました。


シュートも入らない、
ドリブルもおぼつかない状態でどうやって勝つか。
この監督が採用したのは、フルコートプレスという、
とにかくコート全体で攻撃的にプレスをかけまくるという、
常識では採用されない戦略でした。


例えば、この監督は相手のスローインボールを
たちまちカットするよう、
スローインする選手の前に立ちはだかる指示を出しました。


バスケットボールでは、得点が入った後、
ゴールされたほうのチームがエンドライン外から
5秒以内にスローインして試合再開となります。
5秒を過ぎるとボールは敵に渡ってしまいますが、
通常こういうことは起こりません。


なぜなら、スローインの時、
相手のチームは自陣に戻って守ることが常識だから。
なので、いきなりカットしようと立ちはだかられると、
スローインをしようとする選手は焦ります。
焦って5秒以上ボールを持ち続けたり、
スローインを失敗したりするのです。


こうした攻撃的なプレスを
コート全体で繰り広げたこのチームは、
次々に強敵を倒していきました。


「あれはバスケットボールじゃないと
 批判を受けることも多々ありましたが、
 技術がない弱小チームが勝つにはそれしかなかった。
 それに、身軽な選手が多かったので、
 この戦略はちょうどよかった。
 ただかなり努力もしました。
 コート全体でプレスをかけるには走力が必要だったので、
 練習はとにかく走る。
 走って走って、また走る、
 サッカー式のトレーニングでした」
そう監督は言っています。


ここで、
元東北楽天ゴールデンイーグルス名誉監督、野村克也氏が
数年前にテレビ番組で語っていたことを思い出しました。


野村氏は高校時代、
「おまえには野球の才能がない」と言われたほど、
パッとしない選手だったと言います。
プロからの誘いもなく、頼み込んでテスト生となるも、
どれだけ練習しても3割打てるようにならない。
観客から野次られることもあったそうです。


ところが、ある時から、
ボールを持つピッチャーの手元がよく見えるようになります。
指の幅から、次に投げるボールがわかる。
それに合わせて打てるようになりました。


実は「球種を読むこと」は
野球界では恥ずべきことだと思われてきたそうですが、
「そうするしかなかった。
 正確に読めるように、
 そしてその通りにバットが振れるように努力を重ねた」
というようなことを野村氏は語っていました。


強者は戦いに慣れている。
だから、それまでの戦いから、
こういう場合はこう戦うべきだという、
ある程度できあがったシナリオで
戦っているのではないかと思います。


一方、弱者は、
強者と同じ土俵では戦えないことがわかっているから、
勝つための別の方法を考える。
自分に有利な戦術を探す。
勝者にはプライドがあり、
非常識だと言われるような戦術をとりにくいのに対し、
弱者には自由がある。
だから常識はずれと言われることも採用でき、
それに向けて努力できる。


『逆転!』の中で、
著者のマルコム・グラッドウェル氏は、こう言っています。


「私たちが持っている、有利と不利の定義は
 とても狭く、硬直している。
 そのため、本当は役に立たないものを高く評価したり、
 力と知恵を授けてくれるものを無用と切り捨てたりしている」


体が小さな者は体の大きい者に勝てない、
新しいチームは歴史あるチームに勝てない、
中小企業は大企業に勝てない。
本当にそうでしょうか。
頭を柔らかくして考えてみたくなりました。

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