ディレクターの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーです

ブログ

ディレクターの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーアベログ

苦手を超えて、未来を共有する

「初めて彼に会った時、
 正直、苦手なタイプだと思った。
 強引なところを恐れた。
 熱っぽさの次元が違いすぎて、
 どう解釈していいのかわからなかった」


ピクサー・アニメーションの共同創設者、
エド・キャットムル氏は、
スティーブ・ジョブズ氏に会った時のことを
こう表現しています。


先週、エド・キャットムル(以降、敬称略)の著書で、
「これまでに書かれた最高のビジネス書かもしれない」
とフォーブス誌に評された、
『ピクサー流 創造する力』という本を読み終えました。


ボリュームがかなりあったので、一気に、
とはいきませんでしたが、
どんどん読んでしまい、読み終わった後は
冒険小説を読み終えた後のような爽快感を得ました。


すでに読んでいる方もいらっしゃるかと思うのですが、
共感するエピソードが多数あったので、
そこから一つご紹介したいと思います。
キャットッムルとジョブズが、
どうお互いの信頼を構築していったかについてです。


キャットムルがジョブズに出会ったのは、
彼が当時所属していた
ルーカス・フィルムのコンピュータ部門が
売却されることが決まった頃でした。
買い手が見つからず、途方に暮れていた時に現れたのが、
当時アップルコンピュータの取締役だったジョブズです。


一緒にビジネスを始めることに合意し、
実際にジョブズがルーカス・フィルムから
コンピュータ部門を買収した時、
彼の弁護士がこんなことを言ったそうです。


「スティーブ・ジョブズ・ローラーコースターに
 乗る覚悟なんですね」。


ピクサーが誕生した当時、彼が一番気にしていたのが、
ジョブズがパートナーとしてどうふるまうだろうか、
ということでした。
当時のジョブズは、取引先を見下したり、
脅したりする態度をとっていたからです。
経営者として最も不安にさせられたのは、
人にほとんど共感を示さなかったことだと
キャットムルは言っています。


ある日、キャットムルはジョブズに
冗談まじりにこんなことを聞きます。
「人と意見が食い違ったときにはどうしているのか」


ジョブズの答えは、こうでした。
「意見が一致しないとわかったときは、
 説明の仕方を変え、時間をかけて、
 正しいことを相手に理解してもらうだけです」。


当時、この会話のことを彼を知る人に話すと、
皆笑ったそうです。


キャットムルはそのジョブズと
それから26年も一緒にビジネスをしました。
「辞任しようか」
と思うほどのぶつかり合いもありながら、
これほど長い間やってこられたのは、
「共に試練を乗り越えるうちに、
 一緒に仕事をする方法がわかってきた。
 そうしているうちに、互いを理解し合えるようになった」
からだとキャットムルは言っています。


その方法は、
「意見が衝突した時はどうするのか」
というキャットムルからの問いにジョブズが答えた、
その方法でした。


例えば、こんなことを言っています。


「2人の意見が食い違う時、私は反論するが、
 スティーブは私よりずっと頭の回転が速いため、
 言い終える前に論破されてしまうことが多い。
 そこで、一週間かけて考えをまとめ、再び説明する。
 そこで、また却下されることもあるが、
 めげずにこれを繰り返すと、次の3つのうちどれかが起こった」


①彼が「なるほど、わかった」と言って、要望に応えてくれる。
②私が、彼の言い分が正しいのを認め、働きかけをやめる。
③いくら話しても結論に達しないので、
 私が最初に提案したことを構わず進める。


3つ目のケースになっても、
咎められたことはなかったようです。
自己主張が激しい反面、
情熱を尊重する人だったとキャッムルは言っています。


ジョブズほどの強烈な個性がある人とビジネスで出会う確率は
そう高くないと思いますが、
「わ、この人、苦手だ」
という人は誰にでもいると思います。
そういう場合は、大抵、
相手の人も自分を苦手と感じていることが多く、
一緒にプロジェクトを進めるとなると、お互い苦痛を伴います。


キャットムルとジョブズの関係を読んで思ったのは、
その先にあるもの、
目標や使命、に情熱を感じることができていれば、
お互いが苦手でうまくやっていけないことは問題ではなく、
やっていくようにするしかないんだ。
そして、やっていくようにするうちに、
信頼が生まれるものなんだ、ということでした。


キャットムルには、
ピクサーを守るためにジョブズの力が絶対に必要で、
ジョブズには、
自分にはまったく創り出すことのできないピクサーの作品や
クリエイティブ環境をコントロールしてくれる
キャットムルが必要だった。
ジョブズはその環境を外部の圧力から守ることが使命だと
感じていたように思いました。


ジョブズが亡くなった後、
ピクサー共同創設者の一人が彼のことを
「クリエイティブ・ファイヤーウォール」と称しました。
ピクサーの創造性の安全を守るために、彼は何でもしてくれた、と。


目の前の人との関係がうまく行っていなくても、
その先の未来が共有できていれば大丈夫。
そんなことを思いつつ、
未来を共有できているか、情熱が持てているかなど、
自分のことを振り返ってしまいました。
すてきな本なので、ぜひお読みください。

これまでの記事

視点発見の旅
メルマガ【開-CAY】お申し込み

ご一緒に「視点発見の旅」へ!
メルマガは「開-CAY」で届きます

詳細を見る >>

「個人情報の取り扱いについて」

このページのトップへ