4つの聞き方
自分はちゃんと聞いているつもりでも、相手から「聞いていない」と言われる。
そういうこと、ないでしょうか。
自分としては、早く終わらせてしまいたい仕事があるから、
手や目は時々動かしていたけれども、
相手の目もそこそこ見ていたし、耳はきちんと相手の話を聞いていた。
こんな状況を相手が見ると、
「この人ちゃんと聞いてないな」となることがあります。
日頃、自分がとっているコミュニケーションを
客観的に見つめ直すエクササイズがあります。
これは、長年、京北学園の学校長を務められた川合正さんが、
大学生とその保護者を対象に定期的に行ってきたワークの一つです。
ワーク名は「4つの聞き方」。やり方はこうです。
2人一組のペアを作り、一人が相談役、もう一人が相談を受ける役なります。
相談役はアドリブでどんどん相談するだけ。
相談を受ける側は時間を区切って、以下の4通りの態度で聞いていきます。
一つ目は、「無視・無関心」。
相談をしてくる相手に全く興味がないかのように振る舞います。
視線も合わせず、あくびをしたり、髪の毛をいじったりします。
二つ目は、「傲慢」。
先ほどとは異なり、耳を傾けはしますが、
相手を見下したような態度で返事をしたり、
途中で話を遮って、一方的に反論したりします。
三つ目は、「普段の対応」。
いつも自分が行っている聞き方で聞きます。
川合さんは、先の2つの態度とあまり変わらない人もいるかもしれません、
と指摘しています...。
四つ目は、「傾聴」です。
相手の目をしっかり見て、相槌を打ち、表情にも気を配る。
身を乗り出す。体全体で相手の話をしっかり聞きます。
このワークを経験すると、演技とは理解していても、
相談する側は、相手に「無視・無関心」な態度や「傲慢」な態度をとられて、
相当嫌な思いをするので、「傾聴」ではとても幸せな気分になるのだそうです。
このワークを体験した大学生の感想にも
「相手が真剣に聞いてくれると、話をすること自体が本当に楽しいと思えた」
と、あります。
また、相談される役の人も、
演技をしながら「これ、普段やっているかも」と気づくそうで、
「今後は聞く態度を改める」という感想が多いのだそうです。
なんとなくコミュニケーションがうまくいっていないと思える相手がいたら、
このワークを持ちかけてみるのもいいかもしれません。
ただし、演技とはいえ、ワーク中に本気で落ち込んだり、
怒り出したりする人もいるそうなので、
ワークはあくまで「よりよいコミュニケーションのための練習」であって、
相手のことを悪く思わない、
という前置きをしっかりすることが必要だということです。