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思いを運ぶ

子どもの頃、吹き替え音声の外国映画を見る度に、
外国の人ってなんて横柄なんだろうと思っていました。
初対面だと思われるインタビュアーに話しているのに全然敬語を使わない。
「僕は◯◯だよ。だって、そうだろ。△△なんだから」というような、
日本人はあまり使わないような表現で、とてもフランクに話しています。
インタビュー中、足を組んで座っていたりするので、
なおさら、なんだか失礼だなあ、という印象でした。


大人になるにつれ、英語には敬語や丁寧語などの細かい言い換えがないこと、
そして、あの吹き替えの日本語台詞を作っているのは、
翻訳家だということがわかってきました。


翻訳家は、たぶんその人の喋り方や雰囲気で、
どういう口調の日本語を喋らせるのか決めているのだと思います。
でも、どうして大半があの口調?
まじめな内容のインタビューをのぞくと、
だいたい「私、◯◯なのよ。最高でしょ?」という感じの日本語。
外国人は日本人よりフランクだから、というような考えがあるからでしょうか。


ハリウッドスターが来日すると、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが
トークイベントなどの通訳をよくされています。


戸田さんは通訳する日本語が丁寧語、敬語です。
その場で通訳する人が「◯◯だろ、△△だからさ」なんて訳さないだろと思っても、
戸田さんが訳す日本語はかなり丁寧。
ブラッド・ピットもトム・クルーズもジョージ・クルーニーも、
「わたくしは◯◯しましたけれども、△△」という感じで訳されます。
なので、戸田さんの訳を聞くと、みんなジェントルマンに見えます。
通訳された日本語でその人の印象が決まるのですから、
かなり重要な仕事ですよね。


サッカー日本代表のザッケローニ前監督の通訳を務めた矢野大輔さんが、
通訳をする上で最も大事にしたことは「温度」も伝えることだと言っていました。


「単純に言葉を運ぶだけではなく、気持ちや話している人との距離感など、
監督と同じ『温度』でやるように努力した」と言います。


そんな矢野さんが、4年間で一番うまくいった通訳として選んだのが、
ブラジルワールドカップで1次リーグ敗退が決まった日に、
監督が選手達に退任を告げた時のミーティングだそうです。


4年間で初めて監督が涙しているのを見て、
矢野さんも言葉につまった場面があったようですが、
監督の思いをしっかり日本語で伝えられたと思っていると語っていました。


単に言葉を運ぶだけでなく、その人と同じ温度で、思いを運ぶ。
これは、通訳や翻訳家に限らず、言葉を使って何かを伝えている私たちも
大切にしなくちゃいけない考えだなと思いました。
例えば、取材記事。
取材した相手が発した言葉を単純に並べるのではなく、
その人が何を伝えたかったのか、どんな思いで話したのかを汲み取って書く。
それができている原稿は仕上がりが全然違ってきます。


ところで、新しいサッカー日本代表監督ハビエル・アギーレさんの通訳者が
4名に絞られたそうです。
勝手な印象ですが、厳しそうな監督です。通訳、大変だろうなあ。
どなたに決まっても、アギーレさんの思いをしっかり選手に届けて、
新日本代表に頑張ってもらいたいです!

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