叱っていますか?
20代から30代にかけて、私はいろいろな方からお叱りを受けました。
私の言動や行動が、よく相手を怒らせていたからです。
ほとんどの場合、意識的に怒らせていたわけではありません。無意識です。
つまり、いろいろわかっていない生意気な若者だったわけです。
例えば、こんなことがありました。
当時、私は情報誌の編集をしていたのですが、
入稿が近いのに、ライターさんから原稿が上がってこない。
数日後、明日入稿というタイミングくらいで、
原稿が上がってきました。
その方に依頼していたページが多かったので、
私たち編集スタッフはバタバタ。
でも、そのライターさんは入稿当日オフィスにいらっしゃり、
上司とお菓子を食べながら、談笑したりしています。
上司の古くからのお友達で、ベテランのライターさんだったのです。
当時の私は、自分の仕事をこなすことで精一杯で、
周囲の方への敬意がことごとく欠けていたので、
その方から原稿を受け取った時に、
相手がカチンとくることを言ったのだと思います
(覚えていないってダメですよね、これ)。
上司の古くからのお友達であること、
その方も一生懸命原稿を上げてくださったことなど、
完全に頭から抜けていたのです。
「ちょっと廊下に出なさい」と言われて、
「物の言い方に気をつけなさい」とお叱りを受けました。
怒らせていることに気づいていない私は、
相手に叱られて初めて、
そうか、そんなこと考えてなかった、と気づく始末で、
「なるほど。申し訳ありませんでした。ありがとうございます」
という感じでした。
当時は、結構そういうことがあったので、
今思うと、相当面倒くさい若者だったと思います。
それにしても、そんな面倒くさい私を
皆さんよく叱ってくれたなあと思います。
本当に感謝しています。
そのまま放っておかれたら、
とんでもない勘違いをした大人になっていたかもしれません
(って、今も大丈夫じゃないかもしれませんが)。
そんな私も、どちらかというと叱る側に立つことが
多い歳になってしまいました。
つくづく感じるのは、人を叱ったりダメな点をフィードバックするのは、
かなりエネルギーのいる仕事だということ。
やらなくてもいいのなら、やりたくない。
しかも、私が新入社員だった20数年前に比べると、
今はかなり叱りづらい環境です。
日本生産性本部が行った『職場のコミュニケーションに関する意識調査』によると、
「叱る」ことに関して、上司の89.0%が「育成につながる」
と考えているのに対して、
部下の56.8%が「やる気を失う」と回答。
「褒める」項目では、80.3%の上司が「部下を褒めている」
と答えているのに対し、
「上司は褒めるほうだ」と回答した部下は51.4%にとどまっています。
つまり、「上司は、育成につながると思って
頑張って褒めてフィードバックしているのに、
部下は褒められていると思っておらず、しかもやる気を失っている」
ということになります。
うーん。頭が痛いですね。
アルピニストの野口健さんが、ある対談の中で、
過去に叱られた経験のことを話していました。
山に登り始めて間もない頃の野口さんは、
スポンサーになってくれる企業を探すために、
山にかける思いを情熱的に書いた企画書を手に
いろいろな会社を回っていました。
しかし、なかなか上手くいかない。
そんなある日、ある会社で、目の前で企画書をびりびりに破かれ、
思い切り叱られたそうです。
「私たちは利益を得るために一生懸命働いている。
なぜ、うちの会社が君のお遊びにつき合わなくちゃならないんだ」と。
野口さんは、思い切り叱られたことで初めて
「自分のことしか考えていなかった」ということに気づいたそうです。
そして、自分の思いを伝えるためには、
「自分のストーリーだけでなく、相手のストーリーもしっかり描くこと」、
「お互いが共通して見られる"夢"を盛り込むこと」
が大切だと感じたと言っています。
なるほど。これは職場のフィードバックでも必要だなと思いました。
お互いのストーリーをしっかり確認すること、
そして共通した夢を描いて、将来につなげる。
君にはこうしてもらいたい、そうすればお互いにこんな夢が見られる、
なんて伝わり方が実現すれば、意識のギャップが少しは埋まるような気がします。
なんて、言うのは簡単なんですけどね...。