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捨てる

「何を作るか」。
これを決めないうちに、急いで料理に取りかかると大抵失敗します。
例えば、こんな感じです。


すごく急いでいる。冷蔵庫から今ある材料を取り出して、
何を作るか考える。でも、時間がない。材料を切る。とりあえず炒める。
この時点で、「あ、炒めるならこの形に切らなきゃよかった」などと思う。
とりあえず、お酒やしょうゆ、みりんを入れてそれなりの味にしようとする。
ここでもまた、「この材料なら中華味にすればよかった」などと思う。
ちょっとオイスターソースを入れてみる。味見。うーん。
ちょっと塩こしょうをしてみる。味見。うーん。


本当は全部捨てて、始めから作り直したほうがいいと思うのだけれど、
もったいないので、絶対そんなことはしません。で、修正を続ける。
できあがった料理は、食べられなくはないけれど、これ何なの?という料理。
和風でも中華風でもない。中途半端な感じ。当然子どもたちからも不評。


先日、原稿を書いている時、私はこれと同じ失敗をしてしまいました。
ここ数週間、私は原稿を通してこれが言いたい、
というものがなかなかありませんでした。
W杯ばかり観ていたせいです(たぶん)。
ただ、取り上げたい題材、キーワードはある。
例えば、「勝利」、「存在感」、「運」、「士気」、「期待」など。
W杯ばかり観ていたせいです(きっと)。


ところが、当然のことながら、題材があったところで、
何を伝えたいかが決まっていないと原稿はまとまりません。
何となく字で埋めて、それらしくはなっても、
「で? 何が言いたいわけ?」となってしまう。


でも、急いでいるし、書いた原稿がもったいないから、
何とかそれを修正して仕上げようとする。
同じ題材から、結論だけ変えてみたり。それを何通りも作ってみたり。
でも、どれも結論が私の意見ではないので、
自分で読み返しても、「...で?」と首を傾げてしまう始末。
なんと私はこれを3日続けました。はあー。


で、どうしたか。
捨てましたよ! 原稿のデータ! きれいさっぱり。
何を伝えたいのかが決まっていないのに、
書き始めたものは、やっぱり形になりにくいです。
これは違う、と思った時点で、
ゼロから始めればよかったとつくづく反省。


もう10年以上前になりますが、
神田うのさんが、パンストなどのレッグウェアやアンダーウェア開発に携わった時の
ドキュメンタリー番組をテレビで観ました。
企業の商品開発の担当者と打ち合わせを繰り返すうのさんが、毎回怒っています。
理由は、サンプルが全くデザイン通りに上がらないから。
「型紙を一から作り直してください! 既存の型紙は捨ててください!」
と、うのさん。
担当者は「わかりました」と言うのですが、
次回の打ち合わせでもまた同じことが繰り返されます。


これは私の想像ですが、
たぶん、現場では「最終的にこれを作るんだ」というところに、
まだ意識が集中しておらず、何とか、あるものをムダなく使おう
というところから抜け出せなかったのではないでしょうか。
それで、「ゼロから作り直さなくても、この型紙はちょっとここだけ直して、
こっちの型紙はここを直せば使えるんじゃないか?」
ということを繰り返してしまった。
人は何とかあるものを使って済ませたい、と思ってしまうものですからね(はい)。


でも「最終的な形が違う」と感じたならば、
やはり新しい物を作り出す決定をしっかりして、
それまでのプロセスを勇気を持って捨てるに限ります。
そうすれば、こうやって新しい原稿が仕上がるわけですから(あー、よかった)!

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