世界で一番クリエイティブな国は?
もう20年も前のことになりますが、
アメリカで数年くらしたことがあります。
バイトをするために、英語でレジュメを作っている時、
アメリカ人の友人が、オーガナイジングスキルがエクセレントだと書けと言うので、
「私、オーガナイジングスキルは全然エクセレントじゃないんだけど」
と言い返すと、
「事実はどうだっていいの。だれでもそう書くんだよ」と言われました。
「でもさ、後でバレるじゃない」と言う私に、
「後で、あいつはオーガナイジングスキルがエクセレントじゃなかったな、
なんて誰も思わないし、そんなことどうでもいいじゃない。
レジュメは自信を持ってクリエイティブに創り出すものなのよ」と彼女。
クリエイティブねえ...。得意じゃないことを得意と書くのは気が引けたのですが、
彼女のアドバイス通りにしました。
ハッタリのレジュメが効いたのか、
私は現地の旅行会社でバイトをすることになりました。
エクセレントではないオーガナイジングスキルで何とか仕事にも慣れた頃、
会社の受付スタッフが数日単位でコロコロ変わることに気づいて、
不思議に思いました。
ある日、採用担当の女性マネージャーに聞いてみました。
すると「パソコンスキルも事務処理能力もエクセレントだと思って雇うけど、
全然そうじゃないことが多いのよ。レジュメじゃわからないの。
何でもエクセレントだと書いてくるから」と言うのです。
たぶん、応募してきた彼女たちもレジュメを
クリエイティブに作り出したのでしょう。
自分が一番魅力的に映るように。そうか、これはアピール競争だなと思いました。
一方、明日から来なくていいと言われた本人たちは、いたって平気です。
トイレで入念にメイクを直し、世間話をした後、
「じゃあねえ」なんて言って帰って行きます。
嘘をついてまで自分をアピールするのはどうかと思いつつも、
彼女たちの怖いもの知らずな自信とポジティブな姿勢に
圧倒されたのを覚えています。
アドビシステムズ社が行った、クリエイティビティに関する調査があります。
日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの5カ国で、
それぞれ1000人に、「どこの国が一番クリエイティブだと思うか?」
と聞いたところ、全体の36%の人が「日本」と答え、1位に。
しかし、日本人で「日本」を選んだのは26%でした。
しかも、「自分自身はクリエイティブだと思うか?」という問いに
「Yes」と答えた人は、日本が最下位。わずか19%でした
(1位のアメリカでは52%が自分自身がクリエイティブだと思っています)。
ちなみに、この調査では、
76%の日本人が経済成長にはクリエイティビティが極めて重要である
と答えています。
「クリエイティブ」であることが重要だと思っており、
世界で一番「クリエイティブ」だと認められているのにも関わらず、
「クリエイティブ」ではないと思っている人が多い、日本。
ハッタリのレジュメはやり過ぎですが、規定のテンプレートにあてはめることなく、
自分自身をアピールすることは、私の友人が言ったように、
十分クリエイティブなことと言えるのかもしれません。
そう考えると、わざわざ何か作品を創ったり、
独創的なアイデアを出したりすることではなくても、
普段私たちが行っていることの中にクリエイティブな行為はあるのかも、
と思えてきました。
世界と勝負することを考えると、
日本人はもっともっと自分たちの力を信じるべきだなと思いました。