ブランディング、コミュニケーション、チームワーク…。週1回の社長ブログです

ブログ:2015年5月

社長の脳みそ整理mono-log モノログ

150525_oriza.jpg平田オリザ氏の「わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か」 (講談社現代新書)が、とてもおもしろかったので、改めて紹介します。


この本の内容は、体系的に書かれたコミュニケーション論というよりも、コミュニケーション談義とか、コミュニケーション四方山話というイメージに近いです。コミュニケーションというものに携わる人が、まるでお茶でも飲みながら自分の意見や考えを述べている...と形容したくなるような、そんな本でした。学問的ではないからこそ、むしろおもしろく読めます。


いつも思いますが、「コミュニケーション」という言葉は、よく使われる割には、わかったような、わからないような、私も含めて多くの人が意外と曖昧な捉え方をしているのではないでしょうか。残念なことに、平田氏も「コミュニケーションとは?」という定義を本の中で明らかにはしていないのですが、社会の中にある「コミュニケーション」という概念への違和感を率直に語っているところに、共感しました。


たとえば、日本人は本音と建前を使い分ける傾向がありますが、これがコミュニケーションを巡っても起きていると、平田氏は指摘します。企業は、人を採用する段階で、説明能力やディスカッション能力があり、多様な価値観をまとめていく能力を持つ人物を求めますが、実際に入社すると空気を読んだり、上司の考えをくみ取ったり、出る杭にはならず、あうんの呼吸で協調していく能力が同時に求められます。人は、矛盾するメッセージが交錯している状況(ダブルバインドの状況)に置かれ続けると、統合失調症に陥る等、健康には暮らせないと平田氏は言います。


多くの企業が、社員にコミュニケーション能力を求めていることは、誰もが承知しています。プレゼンスキル、交渉スキル、相手の話を正しく聞いて理解する力、リーダーシップ、グローバルコミュニケーションスキルなど、コミュニケーションに関連する本が、次から次へと出てくるのも、それだけ需要があるからです。しかも、企業にとっては、「売上」も、「ブランド」や「顧客満足」も、社員一人ひとりのコミュニケーションの積み上げによって、初めて築けるものなので、コミュニケーションの良い状態を作り出すことは、個々人の問題であると同時に、企業全体でも考えるべき問題となっています。

それだけに、コミュニケーション能力を養うこと、コミュニケーションの良い状態を作り出すことの必要性/重要性は高いのですが、社内および社員のコミュニケーションの問題をどう解決し、どうやって状況をより良くするか、そもそもどのような状況を目指すのがいいのかという事柄に対し、本気で取り組む社会にはなっていないように見えます。


平田氏は、表現方法こそ異なれど、恐らくは同じような問題意識に立っているものと思われ、コミュニケーション教育のあり方から見直すことを説いています。


この本の中で印象に残った点をピックアップしました。

●若者のコミュニケーション能力が低下しているとよく言われるが、実は能力の問題ではなく、意欲が低下しているのではないか。人は、分かり合えない体験がないと、分かり合いたいとは思わない。

●社会に出るまで、親と先生以外の大人に会ったことがないという若者は一定数いる。それによって、慣れている/いないが生じるが、慣れの問題なら、早く慣れてしまおう。

●コミュニケーション下手であることを人格と捉えがちだが、混同してはいけない。

●どんなコミュニケーションが快適かは、国や文化によって違う。列車やエレベータで気軽に挨拶する方が快適と感じる文化圏もあれば、無言でいる方が快適でいられる文化圏もある。

●明治の近代化以降、人と人の間で、異なる価値観や情報について交換し合ったり、擦り合わせを行う「対話」という概念が未成熟なまま、日本は歩んで来た。会話はあるが、「対話」が弱い。「対話的な精神」とは、異なる価値観の人と出会い、それを通して、自分の意見が変わっていくことを受け入れる態度のことである。

●その人がどんなつもりでその言葉をつかっているかという、背景にある意味:コンテクストが分からないと、分かったことにならない。言外のコンテクストを理解しようとすることが、コミュニケーションを左右する。


もしご興味があったら、ぜひ読んでみてください。

では、今週も楽しい1週間でありますように!

先日、阿部貢己発のメルマガ「『なぜ?』を『どうする?』にして未来へつなげる」に対してお寄せいただいたご感想で、「NVC」のワークショップをやる予定はないのか、という質問的ご意見をいただきました。心意気としては、"Yes, we will !"なのですが、仕事として実施するには、やっぱりちゃんとした準備が必要なんですよね。
しかも、今、セミナー全体を再構築したいという思いもあり、もう少し温めてから、NVCとしてなのか、そのエッセンスなのかはともかく、何らかの形でいつかやりたいなと考えています。

さて、先日のブログの最後にも書きましたが、平田オリザさんの「わかりあえないことから」を読み終えて、とてもおもしろかったので、そちらのレビューを書こうと思っているのですが、まだ手つかずです。


では、今日配信のメルマガをシェアさせていただきます。


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NVC(Nonviolent Communication)について考える「言葉の壁」シリーズ。
これまでの4回を振り返ってみましょう。
まず、気持ちのいいコミュニケーションを分解すると、
「観察」「感情」「必要としていること」「要求」の
4つの要素で構成されています。
自分に葛藤を与える他人の言動について、
評価や判断を交えずに「観察」に基づいてシンプルに語り、
自分がどう感じているか「感情」を述べ、
感情の原因は「自分が何を必要としているからだ」と自分の願いにあることを語り、
最後に具体的な「要求」をする、、、、
NVCが示す理想のコミュニケーションがそのような流れのものであることは、
第3回で書きました。


例としては、こんな感じです。
【1】NVCではない例(イライラの原因は相手にあるとして、攻撃している例)
「田中君、例の書類、明日が提出日なのに、未だに状況説明がないけど、
君は、自分の責任をどう考えているんだ?
当日、その場で初めて見るなんてことになって、恥をかかせないでくれよ。
いったい、いつ見せてもらえるの?」


【2】NVC的な例(イライラの原因は自分の願いにあるととらえ、要求している例)
「田中君、例の書類、明日が提出日なのに未だに状況説明がないと、
どうなっているか心配で、イライラするんだ。
というのも、ブラッシュアップしてベストなものを出したいからなんだよ。
ブラッシュアップする時間も必要だから、今現在の状況を説明してくれない?」

はっきり言って、上司からこう言われたら、どっちの場合でも焦ると思います。
でも、【1】のように言われた場合はムッとする反応が多くなり、
【2】のように言われた場合は申し訳ないという反応が多くなるのではないか、、、
と、そんな気がするのは、私だけでしょうか。


さて、今日のテーマは:自分の感情(どちらかといえば負の感情)を
自分の願いと紐づける、です。


でも、たとえば報連相ができない部下に対して、
「組織人として、こういうことは常識だと思ってほしい」とか、
「組織である以上、一人で動かれても困る。そんなこともわからないのか!」
...と相手を否定する心理になること、ありますよね〜 よくわかります。


でも、NVCでは、誰かの言動が自分の感情を刺激することはあっても、
その感情を生じさせる原因そのものではないと考えます。
原因は、相手の言動ではなく、自分の願い、すなわち
自分が必要としていることにあると考える。


さて、これを聞いて、腑に落ちますか?
「組織人として、こういうことは常識だと思ってほしい」と思っている時に、
「『私の願いが、〜だからだ』と伝えるべきだ」と言われても、
あっさり、そうなのか...とは思えないのではないでしょうか?


私が腑に落ちるまで過程でも、心の中でいくつもの問いかけが
生じました。
1)相手を攻撃することが目的なのか?(NO)
2)相手に望むこと、応えてほしいことがあるのか(YES)
3)攻撃して、それは叶うのか(NO)
4)反対に、もし自分がリーダーではなく、
応えてほしいと望まれる部下の側なら、リーダーからどう言われたいか?


4番目の問いが一番むずかしい問いでした。
最初に浮かんだ私の答は、「もっともらしいこと、お決まりのことはいらないから、
その人らしい言葉で、答えを聞きたい」というものでした。
つまり、「本音」で接してほしい、私が部下ならそう思うな、、、と思ったのです。
そして、その言葉は、私への愛から発せられた言葉であってほしいし、
その人自身に対しても、周りに対しても真摯に誠実に生きようとしているからこそ、
発せられた言葉であってほしいと思いました。


では、話を元に戻して。。。
自分の感情を、自分の願いとつなげて話してくれると何が伝わるのでしょう?
相手は、何を感じ取るのでしょう?


私は、もし自分がそう伝えられたなら、
その人の価値観やポリシーを共有されたと感じると思います。
そして、もうひとつ重要な点は、自分のネガティブ感情の原因を責任転嫁せず、
自分で引き取っている他責でない姿勢に信頼感を抱くと思います。
たとえ「それ、ちょっと違うよ」と否定されるようなことであっても、
「なぜなら、自分はこんな仕事をしたいんだ」と言われたら。。。
その人の精神の根っこの部分をシェアしてもらえたと感じ、うれしく感じます。
結局「本音」で接してほしいというのは、そういうことではないでしょうか。


要望や要求も「その人の願い」「叶えたい思い」という形で伝えられると、
人はそれに応えたくなるものなのかもしれませんね。


さ、5月も後半に突入しました。今週も元気に過ごしましょう!


※読んでいただきありがとうございました。
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今回は、自分の感情の源にある願いを語るというのは、「弱さを見せるようでイヤだ」と
思う方もいるのでは? 「弱さ」について島崎藤村の残した言葉です。

150511_communication.jpg


 最近、社内で議論していることがあります。それは、そもそも「組織内コミュニケーションが良い状態とはどんな状態なのか?」、それをどう定義づけるかについてです。組織内部のコミュニケーションの構造は、組織の中に縦横無尽に張り巡らされた蜘蛛の巣のようなもの。ただし、その中でも理念やビジョン、方針というものは、どっしりと中心に座っている、そんなイメージがあります。「何が」「どうなっていると」「良い状態なのか?」。私が勉強不足なのかもしれませんが、すっきりわかりやすい体系というものにいまだ出会えていません。


 一般に、社内広報部門が担う組織内コミュニケーションは、情報発信的な「1対多」のコミュニケーションを指すことが多いように思います。けれども、組織内コミュニケーションの良い状態というのは、社内広報担当だけで作っているのではなく、1対1のコミュニケーションと、1対多のコミュニケーションの絡み合いの上に成り立っているといっても過言ではありません。ですから、「組織内コミュニケーションが良い状態」を定義づけるときも、1対多のコミュニケーションだけでは規定できず、1対1のコミュニケーションについても触れないのはおかしいのではないか、、、と、私は今、そんな視点からこの問題を眺めています。


 しかし、そもそも「コミュニケーションが良い状態」を普遍的に定義づけることができるのだろうか?という疑問もあります。たとえばですが、ホテルのエレベーターの中。海外に行くと、「Good morning!」とか「Hi」と声をかけられることがあります。でも、日本のホテルでそういう風景はあまり見かけません。どうするとコミュニケーション的に心地よいかの感覚が、そもそも違うからだと思います。だとすると、「絶対的な良い状態」を規定することはできるのでしょうか。これは「幸福とは?」を規定する作業に似ていますね。でも、だとすると、できるのかもしれませんね。


 また、今、企業が人材に求める「コミュニケーション能力」というのも、意外にも曖昧なのではないか?...と、そんなことを思ったり。ロジカルシンキングとか、プレゼンテーションスキルとか、グローバルなコミュニケーション能力などの重要性は誰もが認識しているところではありますが、そもそも何をもってコミュニケーション能力があるというのか、実はすっきりした共通認識はないのだと思います。

 リーダーシップとコミュニケーション能力の関係性についても同様です。当然、関係していると誰もが思っていますが、そもそも広い意味での「コミュニケーション能力」とリーダーの「コミュニケーション能力」は区別されるべきなのかどうか。


 この問題意識は、私自身のもやもやから始まりました。グラスルーツはコミュニケーションの会社。なのに、「コミュニケーションが良い状態」の定義を持たず、お客様ごとに問題の捉え方を変えて行っていいのだろうか、、、と。これは、結構難しい問題で、永久に悩むかもしれません。でも、今の段階で私が思っていることを書くならば、一般論は置いておいて、私たちグラスルーツが描く理想の「コミュニケーション」をまず定義づけるべきなのかな、と、そんなふうに思っています。


いやぁ、「コミュニケーション」というのは、日々耳にする言葉で、わかったような気持ちになりやすい言葉ですが、実はとっても奥が深くて、一言では語れない言葉ですよね。本当は、今日は「わかりあえないことから」(著:平田オリザ)というコミュニケーションに関する本を紹介しようかと思っていたのですが、私の現在地報告というか、問題意識の紹介で終わってしまいました。でも、これ、とても重要なテーマだと思います。お互いにわかったような顔をして「もっとコミュニケーションを図ろう」などと言う前に、そもそもそれが何なのかを議論することが先決なのですよね。その骨太なテーマ(多分、永遠のテーマ)について、私たちグラスルーツは、おごそかに、かつ、熱く語り合える会社でありたいと思いを新たにしました。

ブログを書いている人

小野真由美

グラスルーツの代表。組織をただの集団ではなく、チームにするための組織内コミュニケーションはどうあるべきだろう?…なんていうことを、いつもツラツラ考えています。ブランディングやコミュニケーション、チームやリーダシップ系の話題が7〜8割、その他の話題が2〜3割。そんなブログを目指します。ぜひおつきあいください。

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