媒体露出とブランドコミュニケーション(その2)
前回に引き続き、マスメディアとブランド戦略の視点で書きます。
ワタシの知り合いが人材サービスの会社を数年前に立ち上げました。皆さんもご存知の通り、この分野では無数の企業がしのぎを削っており、一般論で言えば、決して楽に勝てるフィールドではありません。しかし、彼が立ち上げたビジネスは、コンセプトも明快で、あっという間に従来なかったカテゴリーを築き上げ、大手企業も利用するほどのポジションをつかみました。その特長はあまりに明快すぎて、書いてしまうと会社も特定されてしまいそうなので、ここでは敢て書きません。
彼から聞いた印象的な話があります。
それは、「いろいろなところから取材の依頼があったけれど、日経が取材に来るまで断り続けた」というものでした。プレスリレーションという視点から言えば、単純に断ることには問題がありますが、プレスとの関係性を損なわずに断ることができたなら、媒体を選ぶことはブランド戦略としては必要な視点です。
前回書いたグレーゾンの媒体への破格の条件でのペイドパブリシティの問題と同様、いくら無料で掲載されるからといって、何にでも載ればいいのではなく、また同じ掲載でもその順番が大事であることを彼は天性のビジネス感覚で理解していたのだと思います。
というのは、彼のビジネスはBtoBであり、大手企業をターゲットにした以上、日経ははずせない媒体だったはずです。一方、新聞というのは速報性を重視しているがゆえに、他の媒体の後追いはやりたがりません。他の媒体に出てしまったら、反対に日経には掲載されにくくなる、彼はそう考えたのだと想像します。
どんな媒体で露出させていくかと同様、どんな順番なら好ましいのかという視点は、広報戦略には必要だと思います。といっても、背に腹はかえられないというのが、広報担当者の本音であろうと思います。しかし、理想論があって現実論を考えるのと、最初から何にでも載ればいいと考えるのとでは大きな違いです。そのためにも諦めずに理想を描くこと、大切ですよね。