ディレクターの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーです

ブログ

ディレクターの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーアベログ

「苦手」の取り扱い

「女性は男性よりも数学が苦手」
などと言われると、
「そう、そう!」と思い込み、
自分の考え方や行動を言われた方向に寄せていく現象を
社会心理学では「ステレオタイプ脅威」
と呼ぶそうです。


カリフォルニア大学のスティール教授らが行った実験では、
数学のテストの前に「女性」であることを
意識させたグループと
そうでないグループとでは、
性別を意識させたグループのほうが点数が低いという結果に。


実際、苦手を意識することで、
脳のワーキングメモリーが制限されることが
わかっているのだそうです。


「苦手」と思い込むだけで、
脳でそんなことが起こるとは恐ろしい。
無理矢理「得意」と思わないと!
と思いましたが、
そんな簡単なことではないですよね。
何しろ、今までずっと「苦手」と聞かされ、信じてきたのです。
そう考えると、親や学校、職場など、
周りの人の言動が個人のパフォーマンスに
いかに大きな影響を及ぼしているか
ということに改めて気付かされます。


「苦手」という字面を見ていたら、こんなことを思い出しました。


子どもの頃、私はピアノ教室に通っていました。
ある日(たぶん小6くらい)、
なぜか、「しっくりこない」と感じました。
楽譜通りに弾いても、何か違う気がする。
正しいのかどうなのか、わからない。


なんて書くと、とても芸術的な悩みのようですが、
今考えると、単に練習不足で、
楽譜通りに弾けていなかっただと思います(笑)。


先生はとても厳しい女性だったので、
その日、難しい顔をしたまま弾けない私を叱りました。
いきなり私の楽譜に「音が苦」と
大きな赤い字で書き込み、言ったのです。
「あなたのピアノは音楽ではなく、音が苦です!」と。


今でも、「音が苦」という赤い字を鮮明に覚えているので、
当時の私にとっては、なかなかインパクトのある
出来事だったのだと思います。
案の定、それ以来、私はやる気がなくなり、
いや、もともとあまりやる気はなかったのかもしれないので、
さらにやる気がなくなり、
引越しを機にピアノをやめてしまいました。


今、考えると、もしかしたら先生は、
少し大袈裟に、少し厳しくダメ出しすることで、
励ましただけなのかもしれません。
スポーツなんかではよく聞きますね。
「全然、できてないぞ!」と言われ、
悔しくて、猛練習したというエピソード。
でも、そう反応する人は、実は多くないのかも、という気がします。
少なくとも私は違いました(笑)。
励ましたつもりだったとしたら、
やる気を失う私を見て、先生はどう思ったかな、、、


皆さんはどうでしょうか。
期待している、という意味で、
「○○さんは、○○がちょっと苦手だよね。だからもっと注意しようね」
などの声かけ、しますか?
あるいはご家族に
「○○が苦手だよね」
なんて言うでしょうか。
私は、、、実は、言っちゃったりしてました。
子どもに、、、。
ああ、反省。


思想家の内田樹氏が著書でこんなことを言っています。


「批判を受けたから魅力が増す、ということはないんです。
というのは、
才能のある人の魅力というのは、
ある種の無防備さと不可分だから」


一度、深く傷つけられると、
無防備さは回復することはなく、
クリエイターなら、作品の中にあった
「素直さ」
「無垢」
「開放性」
「明るさ」
は一度失われるとに度と戻らない、と語っています。


内田氏はこれまでの経験から、
人に才能を発揮してほしいと思ったら、
その人の「これまでの業績」についての
正確な評価を下すよりも、
その人がもしかすると「これから創り出すかもしれない傑作」
に対して期待を抱くほうがいい、
とも話しています。


「才能というのは、あなたには才能がある、
という熱い期待のまなざしに触れたことが
きっかけで開花する。
才能はそこにあるというより、そこで生まれる」と。


ああ、これはそうですねえ。
小学生の私が、ピアノの先生の熱い期待のまなざしに触れても、
才能が開花したとは思えませんが、
いやいや、こればかりはわかりません。
もしかしたら、調子に乗って、猛練習したかもしれません。


そう考えると、
調子に乗るくらいでいいのかも、と思えてきます。
一人ひとりがそのくらいの勢いで
何かに取り組んだら、クリエイティブな世界になるでしょうね。


「苦手」の取り扱い、注意しなくちゃいけませんね。

これまでの記事

視点発見の旅
メルマガ【開-CAY】お申し込み

ご一緒に「視点発見の旅」へ!
メルマガは「開-CAY」で届きます

詳細を見る >>

「個人情報の取り扱いについて」

このページのトップへ