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リスペクトがあるからこそ

「『スターウォーズ』の監督をしてくれませんか?」


ルーカス・フィルムから新エピソードの監督を依頼された時、
J・J・エイブラムス監督は断ったと言います。
(これから映画を観る方、安心してください。内容の話はしません。)


断るだろうなあ。そうだろうなあと思いました。
なぜなら、絶対に失敗できないプロジェクトだからです。


失敗できない理由の一つは、
熱狂的なファンが、目をギラギラさせて待っていること。
『スターウォーズ』は、
ジョージ・ルーカス監督が長年メガホンをとり続けて来た名作。
全世界に熱狂的なファンがいて、
彼らは常に新エピソード公開を今か今かと待っています。
思い入れが強いと、いろいろ言いたくなるもので、
実際、これまでも公開の度に
「このシーンはいらない」、「あのキャラクターはいらない」
などという意見が飛び交い、
ジョージ・ルーカス監督もうんざりするほどでした。
新監督ともなれば、彼らが黙っているはずがありません。


失敗できない理由その二は、なんと言っても、
ディズニーのロゴが出る最初の『スターウォーズ』であること。
2012年にジョージ・ルーカス氏は
ルーカス・フィルムと『スターウォーズ』の全権利を
40億ドル(日本円で4800億円)で米ディズニーに売却しました。
つまりこの映画は40億ドルのプロジェクト。
40億ドルの失敗できない映画の監督、なかなか引き受けられません。


しかし、J・J・エイブラムス氏は一度断ったものの、
最終的には監督を引き受けます。
驚いたのは、
一度断った一番大きな理由も、引き受けた理由も同じだということ。
それは「彼自身が『スターウォーズ』の大ファンだから」なのだそうです。


「10歳の頃、初めて公開された『スターウォーズ』を観たことが、
その後、映画の道に進むきっかけになった。
リスペクトがある作品だからこそ、
簡単に監督を引き受けるわけにはいかないと断ったんだ。
でも、時間がたつと、憧れの『スターウォーズ』の乗組員にならないなんて
どうかしている、と思うようになった」
そう、インタビューで語っています。
(ファンが怖いわけでも、40億ドルにプレッシャーを感じたわけでも
なかったんですねえ。そんな人だからこんなオファーが来るんだなあ。。。)


さて、こうしてメガホンを取ったJ・J・エイブラムス氏。
ミッション・インポッシブルやスタートレックを手がけた人気監督が、
『スターウォーズ』をどう撮ったのか注目が集まる中、
撮影後のインタビューでこう答えています。


「『スターウォーズ』は、コンセプトデザイン、撮影、美術、
どの分野でもすばらしいスタッフによって支えられてきた作品だ。
1977年から続くシリーズだから、
スタッフの中には、亡くなってしまった方もいる。
今回のアプローチはマネやコピーではないことが大前提だけど、
僕はこのサーガに関わってきた
すべてのアーティストたちを祝福したいと思ったんだ。
この世界を作り上げて来た人々に対するセレブレーションだ」


私、公開日翌日に早速観てきました。
映画が終わって、会場が明るくなった時、
もしそこにJ・J・エイブラムス氏が立っていたら、
勢い良く駆け寄って、ハグしたことでしょう。
まさに「セレブレーション」だったから。


大作を引き継ぐ。
関わった人々の期待に応え、成功させる。
大変なことだと思います。
この映画で、私は、それを可能にするものは「リスペクト」なんだ、
と思えました。
どんなに責任感や度胸があっても、
リスペクトがなければ作り上げられないことがある。
そう感じました。
公開からしばらくたって、またいろいろな意見が出ているようですが、
私はJ・J・エイブラムス監督に大きな拍手を送りたい気持ちです。

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