[2011.01.31]
伝える技術:「ふーん」と「へぇ?」の違い
こんにちは。小野です。
皆さんは、会話やメール、書類でのコミュニケーションを通じて、誰かに何かを伝えようとするときに、相手にどう思ってほしいかを考えることはありますか。ここでいう「どう思ってほしい」とは、「自分の考えを理解してほしい」ということではなく、「早速やってみたい」とか、「話をしてホッとした」「考えが整理できてすっきりした」など、相手の心への作用を意味しています。
それほど込み入った話ではない普通の会話の場合は、そんなことを考える必要はないかもしれません。でも、部下に何かを伝えるときには、そうした作用を意図することも多いのではないでしょうか。
企業コミュニケーションに携わる私たちの場合も、企画や編集という仕事を通じて「伝える」ことに関わっています。ですから、読み手の心への作用を事前に規定するということが最初の大きなテーマになります。
これを私たちは「読後感の規定」と呼んでいます。どう規定するかはケース・バイ・ケースで、時々の判断ですが、少なくても「ふーん」という作用のものは読後感としてはダメなわけです。理想は、「へぇ?!」とか「えっ!?」など。なぜなら、「ふーん」という反応の場合、大抵は伝わっていません。右の耳から左の耳へすりぬけただけ。違う言い方をすれば、話としては聞いた、情報としては目にしただけであって、その人が自分の言葉で翻訳できるレベルでの理解には至っていません。これが「ふーん」の反応の特徴です。
ところが、「ふーん」ではなく、この「へぇ?!」とか「えっ!?」を生み出すのは容易ではありません。みなさんも、経験があるのではないでしょうか。
たとえば、部下に何かを伝える時に、上司が感じている問題意識を部下が共有できていない段階で、いきなり結論を言って教え諭しても、部下は思ったような反応をしませんよね。それと同じで、読み手が何の関心も持っていないことについて、いきなり本論に入ったり、「知っておいてくださいね」ぐらいの軽い前フリから始めると、その中身を読んでも「ふーん」としか思ってもらえません。
つまりは、「読後感」の前に、「読前の状態」を想定する必要があるのです。今問題意識が共有できていないなら、なぜ共有できておらず、関心を持てていないのか、どこから入ると興味を引き寄せることができるのかを分析し、現在の心理を特定(想定)しなければより良いコミュニケーションは果たせません。
しかし、1対1のコミュニケーションでも同様ですが、伝える側は伝えたいあまりに、一生懸命その中身を語ることに傾倒します。熱が入れば入るほど、たくさんのメッセージを送ってしまい(しかも自分の考えが整理できていない状況のまま)、返って相手を混乱させてしまうのです。
実は,私は今、伝える技術とその考え方を社員に教えるために、OJTを行っているのですが、その「伝えるための考え方」を私が伝える過程で、社員が混乱しているというパラドックスにはまっています(笑)
幸いこれは多少なりとも「へぇ?!」がある中での混乱であり(多分。。)、混乱しているという話を聞けている分(その人の言葉を借りれば「樹海の中にいる気分」なのだとか)、埋めようがあるのでヨシとしています。伝え方を設計するにはあまりに多面的かつ立体的な思考が必要なので、混乱するのが普通だと思いつつ、どうしたら混乱を最小限に止めることができるのかは、私自身の宿題。
伝えたいことがあるときに、「ふーん」という反応は淋しいものです。企業コミュニケーションでも「へぇ?!」とか「えっ!?」を目指したいものですね。
相手の心に対する作用、そちら側からコミュニケーションを考えてみることも必要ではないでしょうか。
[2011.01.24]
情という観点からプレゼンテーションを再考する
こんにちは、小野です。
今日は,単刀直入、「プレゼンテーション」について書きます。最近、「プレゼン」を巡って、いろいろ思うことがあったのですが、バラバラだった考えが段々まとまってきたので、自分の脳内定着のためにも書いておきたいと思います。
本当に提案は求められているのか?
皆さんも、プレゼンの機会は多々あるのではないでしょうか。プレゼンという名前で呼ぶかどうかは別として、何らかの考えをまとめて、相手に説明するというのは、日々あることです。
ワタシたちの仕事でも同様ですが、一番の舞台は何と言ってもコンペでのプレゼンです。お題は様々ですが、営業を仕掛けてのプレゼンではないことの方が多いので、提案を依頼されてプレゼンの準備が始まります。
提案を依頼されている。
しかし、その前提について、ワタシは一度白紙で考えてみることにしました。果たして、本当に提案が求められているのか、と。もちろん、求められているから頼まれるわけで、求めていないとは言いません。でも、良い提案であるかどうかが、相手にとって一番重要なことなのか、とそんなふうに自問してみたのです。あるいは、良い提案の選択基準はあるのだろうか、と。
「情」がクリアされなければ「理」は通用しない
話は飛びますが、1年ほど前に、自社でコンサルを探した際に提案をもらったことがあります。普段とは反対側の立場に立ってみて、気づいたことがあります。何人かの方とお会いして、提案をいただきましたが、正直なところ、もらった提案のどれが優れているのか、判断がつかなかったのです。またコンサルティングの依頼であるだけに、提案された方法というものが完璧にイメージできませんでした。
結局、自分たちの求めるゴールまで、誰が一番自分たちに合った形で導いてくれそうか、という、なんとも感覚的な判断で結論を出したのです。
「合っている」という意味にはいろいろなことが含まれています。人柄的に合っている。雰囲気的に合っている。期待に対して合っている。予算的に合っている。予算を除けば、すべて「理」ではなく「情」による判断をしたわけです。そして、仮に、理屈上は素晴らしい提案だと思えるものがあったとしても、感覚的に合わないと感じたら、恐らく選択しないのが人間なのではないでしょうか。
「この人は自分と同じ気持ちであるか」という目線
またまた話は飛びますが、先日、インナーウェアのECのナンバーワン企業である白鳩の池上社長とお会いしたときに、こんな話を聞かせてくださいました。
「営業というのは信用を売り、人格を売ることだ。信用というのは、この人は自分のことを理解して、自分と同じ気持ちになってくれる人だと思われたときに築ける。同じ意見でも、信用しているときには聞く気持ちになるが、信用していなければ反発したくなるのが人間だ」
この話を聞いて、今までわかっていたつもりでいたけれど、本当にはわかっていなかったのではないかと、そんな気持ちになりました。
同じようなことを神田昌典さんも本の中で書いています。多くのプレゼンは「よく勉強してますね」とは思ってもらえるだろう。しかし、相手の気持ちにあるのはそれだけではない、と。
ワタシたちのプレゼンは、はまったときには「愛がある」と思ってもらえます。本当に相手の企業のことを考えて,考え抜いていることが伝わったときです。その場合、では実際何が良かったのかと振り返ってみると、中身の論理性ではなく、多分「期待に応えてくれそうだ」「期待に対して合っている」と相手がイメージできたことが良かったのだと思います。でも、はまるツボというのは、ケースバイケース。「よく勉強していますね」としか思われなければ、まったく意味を成しません。
あるべき論も大切ですが、心の方からプレゼンにアプローチすることの方が最近は大切だと考えています。
皆さんはどうお考えですか。
[2011.01.17]
柄にもなく,ワタシが逆算ライフについて書くなんて。。。
こんにちは。小野です。
「今年は、ひとつのテーマに特化したブログを書こうかと思っている」と友人に話したところ、「仕事ネタばかりではつまらないし、最近、仕事ネタが多いね」と言われました。そこで、テーマ特化型ブログを始めるかどうかは脇に置き、まだ年初でもあるので、今日は超私的なネタで書きます。
ワタシが生きているうちに行きたい海外はどこか、そのベスト15位について。それを含めて最近考えることについて。
この生きているうちに行きたい土地リスト15は、去年2月に作ったものになります。大公開です! 15位といいながら、なぜか14位で終わっていますね(笑)
生きているうちに行きたい場所リストは、1度行ったので入れないというのではなく、すでに行ったことのある土地にもう一度行きたければ入れています。たとえば、バンクーバー、ハワイ、パリ、ニューヨークは最低でも1度以上行ったことがありますが、また行きたいので入っています。バリ島ファンとしては、バリも入れたいところ。ルーレットファンとしては、ラスベガスも入れたいところなのですが、いずれもベスト15には入れませんでした。切り捨てることによって、自分の興味が整理されるのが、リストづくりのいい点です。
1位 モロッコ
2位 イスタンブール
3位 バンクーバー
4位 ブエノスアイレス
5位 ハワイ
6位 コスタリカ
7位 アフリカ(ライオンさん、ゾウさんと会えそうな場所に)
8位 クロアチア
9位 パリ
10位 マダガスカル
11位 ニューヨーク
12位 チェコ
13位 グランドキャニオン
14位 イースター島
8位のクロアチアは数年前にチケットまで取っていたのに、急遽キャンセルしたことがあって、ぜったいリベンジしないと後悔しそうです。1位のモロッコもここ5年の間、毎年行きたいと思いつつ、気候の問題とラマダン(断食)の時期の問題でなかなか行けていません。行きたい国、人の興味は時間とともに変るので、このリストは毎年更新して良いというのをルールにしましたが、今年は大きく興味が変っていないので昨年のままとしました。
さて、このリストを作ったときの発想は、限りある人生でやりたいことがあるのにやり残したまま死にたくない、というのが原点にありました。こういう気持ちは、旅行に限らず多くの人にあるのではないでしょうか。仕事や家庭生活という切り口でも同様だと思います。
若いときは病気をしたときの自分や、ある日突然死んでしまう自分をイメージできませんが、ワタシの世代になると、たとえばクラス会で「くも膜下出血」から生還したというような友人に会ったりして、与えられた命を全うするためにはどうしたらいいか、人生の持ち時間からの逆算を考えるようになります。
けれども、人生の持ち時間はそもそも誰にもわかりません。明日、突然倒れるかもしれないのです。それでも後悔しない、そんな生き方をしたいものだと思います。
持ち時間がわからないのだとすれば、なるべく若いうちにその視点で人生と向き合うことが秘訣なのかもしれません。先日、グラスルーツの元スタッフ(20代)からもらった年賀状に、40代をイメージしないといけないと思っていると書いてありました。現スタッフのあるディレクター(30代)は生きているうちに読める本の数に限りがあると思うと、読み残しをしたくないと語っていました。直感的刹那主義なところのあるワタシ自身は、性格的にいえばそれほど綿密に人生設計を行ってきたタイプではありません。でも、最近はそれではあかんやろ、と思うようになっています。そして、本当に後悔しない生き方というのは、行きたかった海外に行けたかどうかではない、別のところにあるのですよね。
逆算のライフプランを立てる。柄にもなく、そんなことを書いてみました。
[2011.01.10]
今年の企業コミュニケーション。そのキーワードを予想する
こんにちは、小野です。
年が明けて、早くも第2週です。
年初には「今年の◯◯を占う」といった記事があちこちで出回りますが、そこでワタシもちょっとだけ予測を。
ワタシがビジネスにおいて注目する事柄。それをキーワードとして挙げるとするなら、次の2つになります。1つは「電子ブック」、もう1つは「マーケティングとコミュニケーションの融合」です。
1.電子ブックの今後
電子ブックの動向については、継続して注目していきたいと思っていますが、今回は当社の元スタッフ真壁さんや佐藤さんの電子ブックの話題を紹介しながら、電子ブックの動向を感じ取っていただきたいと思います。真壁さんは「グローバル発信」、佐藤さんは「ローカルなモデルを全国へ」と、そんな視点を感じる活動を行っています。真壁さんが当社のメーリングリストに送ってくれた一文の中にこんなフレーズが。
個人単位での活動が出版ビジネスとして可能になった点もメリットですが、基本、国境がない(全世界で同時に入手可)という点も、主に発信元にとって、とても魅力的なメディアだとは思います。
真壁さんが進めているプロジェクトは、1月27日にイベントを行うそうです。
ぜひご興味のある方はご参加ください!
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電子デザイン季刊誌『de』創刊記念トークセッション
開催日時:2011年1月27日(木)19:00 - 20:30
会場:アップルストア銀座店
定員:120人
入場料:無料
出演:永原康史(epjp代表)
ゲスト:天野祐吉(エッセイスト)、木本圭子(アーティスト)、
港千尋(写真家)ほか
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佐藤さんのプロジェクトである電子ブック「ツナガリ」は創刊からわずか6週間で、12,000のダウンロードを獲得。猛進撃中です。それにしても、12,000とは。。。まもなく、ちょっとした専門雑誌並みになる勢いです。しかも、TokyoWolkerとか、渋谷大学のような地域横展開の可能性が十分あります。乞うご期待!
ツナガリVol.7
2.マーケティングとコミュニケーションの融合
ネットの進化に伴ってダイレクトマーケティングは進化してきています。2000年からの10年間にダイレクトマーケティング業界ではネットを使ったメソッドの蓄積が行われてきました。多くの若手マーケッターがその流れで活躍しています。けれどもその本質自体は、ネット以前とネット後とで大きく変わったわけではありません。「エモーショナルマーケティング」という言葉に代表されるように、人の心を動かすセールスレターの書き方のノウハウは、今やネットでのランディングページに応用されています。これらのマーケティング活動で培われたメソッドは、広報/コミュニケーションの分野でも応用できると思います。
ワタシは、ここで2011年の第二のキーワードに「マーケティングとコミュニケーションの融合」を挙げましたが、融合させようという考え方自体は大分以前からありました。「マーコム」という造語があることが、それを物語っています。しかし、実際にはなかなか具体性の伴うものがありませんでした。しかし、そろそろそういう視点での動きがあっても不思議ではありません。いや、むしろ各企業の経営的な目線でいえば、経費をかけて行う以上、効果は測定されるに越したことはないのです。ところがコミュニケーションの効果測定は、マーケティングでの効果測定に比べて、格段に甘い。もしくはなされていないに近いのが実態です。ダイレクトマーケティング分野のコミュニケーション手法をコーポレートコミュニケーションやインナー向けコミュニケーションにいかすことで、もっと精度を高めることができるのではないかと思っています。
さ、2011年。今年も、やりたいことは満載です! でも、派手な花火を打ち上げるのではなく、地道に一歩一歩進んで行きたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。
[2011.01.03]
あけましておめでとうございます
小野です。あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
皆さんは今年をどんな年にしたいですか?
どんな年になるだろうと予測していますか?
さて、12月31日の新聞で、オノヨーコのアート広告をご覧になりましたか? 題して「ことばのちから」です。全文を無断転載することは普通ならいかがなものかと思いますが、インタラクションを重視しているオノヨーコさんなら、むしろ歓迎してくれると信じて全文を引用します。
「ことばのちから」あなたのことばは水に落とした小石が世界中の海にひびくように永遠にかけめぐるのです。その力を、信じましょう。山をも、海をも、動かす、大きな力。yes,オノ・ヨーコ 12月31日 zolo
言葉にはチカラがある。
これはワタシ自身の信念でもあります。
コミュニケーションは言葉だけで行われるわけではない。
でも、言葉によるコミュニケーションが果たす役割は極めて大きいし、言葉にかかわる仕事の責任も大きい。。。
そんなふうに考えているだけに、この広告をずっしりと重く受け止めたと同時に、共感をもって読みました。ワタシがこの世界に入ってきたのも、「言葉」を愛し、「言葉」の可能性を信じたからです。
「言葉」で何ができるか? 「言葉」でどこまでできるか? 今年の当社の年賀状のコピーは「一字が万事」でした.
言葉は私たちの原点なのです。その原点を大切に、今年もやっていきたいと思います。
グラスルーツで言葉を扱っている社員のみなさん!
その重みを再認識して、今年も元気に頑張りましょう!
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