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「言葉」にすることから始まる

スポーツ雑誌に、元サッカー日本代表の
中田英寿氏の記事が載っていました。


号全体は日本サッカーの「天才」特集。
スペインの名門クラブへの移籍が決まった
久保選手や、小野選手など、
テクニックに優れた選手が取り上げられています。


一方で、中田氏は、
「天才と呼ばれることはほとんどないが、
類まれなる精神力が特別だった選手」
として紹介されていました。


中田氏の現役時代のプレーを思い起こすとき、
真っ先に浮かんでくる言葉は「正直さ」と「強さ」です。


サッカーでは、わざと大げさに転び、
あたかも相手チームの選手に
転ばされたように見せるプレーを時折見かけますが、
中田氏はそんなことはしませんでした。


相手チームの選手に、
ユニフォームを引っ張られようが、
腕を掴まれようが、転ばない。
どんどん走る。どんどんボールを運ぶ。
とても清々しいプレーでした。


記事では、そんな中田氏の人柄を物語る
エピソードを中学時代のサッカー部コーチが語っています。


ある日、練習試合で負けた中田氏たちに、
コーチはグラウンドを走るよう命じます。
当時、部活での罰走はめずらしくありませんでした。


しかし中田氏は、走り始めた選手たちから離れ、
車で待っていたコーチのところへ来て
こう言ったそうです。
「コーチは怒っているけど、これって俺らだけの責任? 
コーチだって責任ありますよね」


「ふつうだったら、そんな生意気なことを言われたら、
もっと怒ってしまうかもしれない。
でも、ちょっと待てよ、俺が変なのか?
と思ってしまった」とコーチは語っています。
そして、選手と一緒に走ったのだそうです。


これ、びっくりです。
私は中学時代、バスケ部でしたが、
顧問からの「練習中に水を飲むな」という
今では考えられないような指示に
何の疑問も持たずに従っていました。


精神力を鍛えるためだったのか、
単なるしごきだったのか、
よくわかりませんが、チーム全員、
部活とはそんなものだと思っていたと思います。
だから、コーチが言っていることに
疑問を持ち、さらにそれを告げる
中田氏の行動は驚きだし、
コーチが中田氏の言うことを聞き入れ、
一緒に走ったなんて、信じられない。


どうなると、こんなことが起きるのだろう。
ちょっと考えてみました。
そして、これだなと思ったのは、「リスペクト」です。


勝手な想像ですが、
コーチは中田氏をリスペクトしていたのだと思います。
たぶん、中田氏は普段も
コーチに考えを告げていたのでしょう。
生意気だと思われていたと思います、確実に。
でも、コーチから見ると、
いつも同じ姿勢で接してくる中田氏は、
一本筋が通っているように見えたのではないかなと思います。
無意識に「こいつの話は聞こう」と
感じたのではないかと思いました。


それと、たぶん、
コーチは中田氏の発言が
「チームを良くするため」「チームが勝つため」
だとわかっていたのではないかと思います。
ただ文句を言っているだけではない、と。
だからこそ、聞いてあげなくてはと
感じていたのではないでしょうか。


実際、記事中でコーチは言っています。
「タメ口きくし、生意気ですよ。
でも、あいつと話していると、
こいつは俺がなんとかしてやらなくちゃ、と思うんです」


「相手を怒らせるのではないか」
「相手を嫌な気分にさせてしまうのではないか」。


伝えたいことがあるのに、なかなか発言できないとき、
思いがちなことです。


でも実は、多くの場合、
相手はそんなふうには感じないのではないか
と思います。


コロンビア大学の研究者が行った、こんな調査があります。
彼らは、普段あまり意見を言えない人に、
交渉をさせる実験を行いました。
そして終了後、交渉相手に対し、
自分がどの程度積極的に発言できたかを聞きました。


すると、「適度に意見を言った」と
答えた人の多くが、同時に
「自分は主張しすぎてしまった」
「相手はきっと気を悪くしてしまった」と
感じていることがわかりました。
しかし、相手の6割は
「あまり意見を言われていない」と
答えているのです。
つまり、伝えたいことを口にしても、
相手は何とも思っていないことが
多いということです。


なるほどなあ、と思います。
よく考えてみると、
「相手の気分を害したくない」なら、
むしろ、きちんと思っていることを
言葉で伝えたほうがいいのかもしれません。
なぜなら、何も言わずだまっていたり、
相手に同意するばかりだと、
相手は、この人は真剣に考えてくれていないと
感じてしまうかもしれないからです。
失礼だと思われることもあります。


だから、何か伝えたいことがあるときは、
きちんと言葉にしたほうがいいと思います。
そして、返ってきた相手の言葉を聞き、さらに返す。
そうしてお互いの気持ちを伝え合うことで、
中田氏とコーチの関係のように、
信頼関係が深まっていくのだと思います。


注意したいのは、伝えるときに、
相手をばかにしたり、
相手を攻撃しないこと。
ただの文句で終わらないようにすること。


何か改善してほしいことがあるなら、
「こう思っている。だからこうしてほしい」
など、その先にどうしてほしいのかを伝えることが大事だと思います。
感情をぶつけて文句を言うのと、
意見を言うのは別のことですから。
なんて言いましたが、これ、なかなか難しいですよね。

さて、6月も半ばを過ぎました。
ジメジメする日も多くなりますが、
今週もどうぞすてきな1週間を。

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