ディレクターの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーです

ブログ:2014年10月

スタッフの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーアベログ

先日、テレビで『奇跡のレッスン』という番組を観ました。
フットサル日本代表監督のミゲル・ロドリゴさんが、
とある少年サッカーチームを1週間指導するという内容です。


「中は危ないよ! 外から行って!」
「危ないよ! 失点しちゃうよ!」
「安全第一だよ!」


初日、ミゲルさんが普段のチーム練習を見学していると、
ゲーム練習を行っている子どもたちに、
チームの監督がしきりに「危ない」と叫んでいます。


ピッチの中央付近は人が集まっているので、
中をパスでつなぐとボールを取られて失点する可能性が高くなる。
だから、より安全なサイドを使って攻めろ、と言っているわけです。


この様子を見て、ミゲルさんが言いました。
「スペインでは日本と逆で中から攻めろと言うんです。中からつなげ、と」
敢えて中を攻める。外から攻めるよりもずっと難しい。
それが頭と体のトレーニングにつながるということなのでしょう。


「危ないよ! 失点しちゃうよ!」
という指導は、実は頻繁に耳にします。
少年サッカーの大会に行くと、
多くのチームのコーチが同じような言葉を発しています。
私たち応援サイドにいる保護者も聞き慣れてしまって、
このことを特に気に留めてもいませんでした。


しかし、ミゲルさんの指導を見て、気づきました。
「危ないよ! 失点しちゃうよ!」と言うのは
「失点する可能性のあるプレーはするな」と言うことと一緒。
「ミスするな」と言っていることになります。
「危ない」と言われ続けている子どもたちはミスを恐れて消極的になり、
ミスにつながりそうなことはしなくなるのです。
番組の子どもたちも、常に萎縮している様子でした。


ミゲルさんは、子どもたちに言いました。
「ミスしてもいい。ミスから学べばいい」。
「一番大切なことは、自分で考えることだ。
しかも速く考えること。2秒先を読むマシンを頭に入れろ」。


「ミスしてもいい」と言われた子どもたちは、
徐々に思い切ってプレーするようになりました。
速く考えることにはほとんどの子が慣れておらず、苦戦しているようでしたが、
それでも自分で考えて思い切ってやってみると、ミゲルさんからすごく褒められる。
どんどん自信がつく。
1週間後、子どもたちは全員笑顔でイキイキとプレーできるようになっていました。


番組を観ながら涙を流したり、ため息をつく私の姿を、
我が家の子どもたちは見て見ぬふりをしていましたが、
長男はたぶん私が反省しているのだろうと思ったでしょう。
ミスを咎めず、どんどん挑戦させることで、別人のようになった子どもたち。
大人の責任は大きいです。


気づいたことがあります。
「チャレンジしてみよう」。
スポーツでもビジネスでもよく口にする言葉ですが、
「チャレンジしてみよう」は「ミスしてもいいから」と1セットですね。


そう考えると、ミスを受け入れる覚悟をしっかり持って、
「チャレンジしてみよう」と言っているかどうか不安になってきます。
チャレンジさせて、ミスを咎める。そんなことをしてしまっていないでしょうか。
チャレンジするには勇気と覚悟が必要だと思っていましたが、
それはチャレンジさせる人にも言えることだと思いました。
あー、また反省モードに入ってきました。

ドイツのサッカーリーグ、ブンデスリーガ。
そこで現在、得点ランキング1位に輝いているのが岡崎慎司選手です。
6試合終えて、5得点。ものすごい数字です。


どのくらいすごいのかというと、
たとえばスペインリーグのネイマール選手が現在6試合で7得点、
メッシ選手が7試合で6得点です。
岡崎選手は、ネイマール、メッシとほぼ同じような勢いで得点しているのです。


岡崎選手がゴールを量産するようになったのは昨シーズンからです。
それまでは2シーズン半戦って10得点という数字でした。
1シーズンの試合数が34なので、85試合で10得点。
ここから今の成績を考えると、何かが劇的に変化したと思わずにはいられません。


「やはり得意なことに集中しようと思ったんです。
そして自分をチームに合わせることをやめたんです」。


インタビューで岡崎選手は好調の理由をこう分析しています。
所属チームが変わったことや監督が変わったことが理由だと思っていたら、
それは一番の理由ではないと言うのです。


なかなか結果を出せずにいた頃の岡崎選手は、
いろいろ器用にこなせる選手になろうとしていたのだそうです。
それが監督とチームが求めていることであったし、
そうすることでチームのためになると考えていたと言います。


しかし、うまくいかない。すべてが中途半端になってしまう。
そんなある日、改めて自分が何をやりたいのか、何が得意なのかを考え直し、
こう思ったのだそうです。
「自分は器用ではない。あれもこれもできない。
自分がしたいのは、ひらすらゴールに向かうこと。無我夢中で得点することだ」と。


「おもしろいのは、自分がゴールを目指すことに徹したら、
周りが合わせてくれるようになったことです。
こいつはゴールに向かう奴だと認識されたんでしょうね」。


「それまでは自分がチームに合わせようとしていた。
そうしないといけないと思い込んでいた。
でも、周りから見ると、何をしたい奴なのかわからなかったと思います。
だから結果としてチームのためになっていなかった」。


チームに合わせるのをやめて、自分の得意なことに集中したら、
チームが合わせてくれるようになった。
おもしろいなと思いました。
他のメンバー視点で見ると、
「ゴールする」という役割が明確になったことで、
それ以外のことをフォローしやすくなったのかもしれません。
結果を出すチームというのは、
そういったことがきちんと行われているのだろうなと思いました。


自分の得意なことって何だろう。得意なことで力を発揮できているだろうか。
メンバーは何が得意だろう。フォローはできているだろうか。
会社や家庭での役割、考えてみたくなりました。

「水族館利用者の大人対子どもの比率は、8:2です。格段に大人が多いのです」


インタビューでそう答えているのは、
今年、リニューアルオープン10周年を迎えている
新江ノ島水族館のプロデュースをされた中村元さん。
中村さんは、「サンシャイン水族館」、「おんねゆ温泉・山の水族館」などの
リニューアルを手がけた水族館プロデューサーです。


さて、大人8割。びっくりしました。
今まで何となく、ファミリーのお出かけ場所と思っていましたが、
そう捉えるべきじゃないですね。
「水族館は動物好きな子どもたちが大人を連れてくる場所ではない」
と中村さんも言っています。


考えてみると、私も水族館ファンです。
でも、水族館であればどこでもいいというわけではありません。
行くとどっと疲れる場所もあります。
とくに遊園地を併設しているような巨大水族館は苦手。
もともと人混みが得意ではないので、人を見ているだけでクラクラします。


「人混みを感じない水族館なんてないでしょ」と思いますよね。
よく行く新江ノ島水族館は違うんです。
まず、規模がコンパクトでちょうどよい。幻想的。落ち着く。
子どもの遊び場に来たという感じがあまりないのです。


記事を読んで「なるほど」と思いました。
新江ノ島水族館は、大人をターゲットにした「日本の水族館」を
コンセプトにしているらしいのです。


「日本人が海という大自然に抱いている畏れの気持ち、
海の幸に感謝する気持ちは独特なものです。
日本独特のアニミズムを新江ノ島水族館では表現しています」
と中村さんは言っています。
具体的には、岩や照明によって陰影をつけて、海の怖さや凄みを際立たせる。
造波装置で潮の動きを作り、海藻を動かして、豊かな日本の海を表現する。
名物のクラゲゾーンも、生命のしたたかさと儚さを感じさせる
幻想的な空間づくりを目指したのだそうです。


新江ノ島水族館は、体験学習企画も充実しているのですが、
ここにも独特のメニューがあります。
たとえば、「相模湾のクラゲ採集&調査」。これは大人限定企画です。
大人限定体験学習って、あまり聞かないのではないでしょうか。
ほかにも「地引き網体験」なんてメニューもあって、
大人がワクワクしそうな企画が用意されています。


さて、中村さんの記事を読んでいて思ったことは、
「○○って、○○のためのものだよね」という認識が、
今や正しくないこともあるなあ、ということです。
「水族館って、子どもが行くところだよね」という認識のままだったら、
今のような新江ノ島水族館は生まれていない。
「お菓子って、子どもが食べるものだよね」という認識のままだったら、
大人向けのお菓子も生まれていなかったでしょう。


まだまだありそうな「○○って、○○のためのものだよね」。
本当にそうなのかな。
検証したくなってきました。

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