できる方法を考えよう
人口約6,000人(2014年9月)、高齢化率45%(2010年)を超える
徳島県神山町という小さな町の「町おこし」を手がけているNPO法人があります。
移住支援や空き家の再生、芸術家の滞在支援などを行う「グリーンバレー」です。
彼らの活動により、1955年から減少し続けていた神山町の社会動態人口は、
初めて増加に。
また、IT企業など10社が神山町にサテライトオフィスを設置するなどの
大きな変化も起きています。
グリーンバレーの理事長である大南さんという方が、
何か新しいことを始める時に必ず出現するアイデアキラーにどう対応するか、
について話している記事をネットで読みました。
なるほどなぁと思ったのでご紹介します。
アイデアキラーとは、過去の失敗を例に挙げながら、
アイデアを破壊する人たちのこと。
誰かが一つアイデアを言うと、
「あなたが言ったことは○年前に出てきている。
あの時は予算が無かったから前に進まなくて、だめだった」などと、
過去の失敗を例に挙げながら、出てくるアイデアを否定していきます。
会合、会社、どこにでもいる、と大南さんは言います。
アイデアキラーが二言目に必ず言う言葉があるそうです。
「難しい」、「無理だ」、「できない」。
会社だとしたら、「俺は聞いていない」「誰が責任をとる?」。
行政だったら「前例がない」。
「前例のないことは時代の歯車を回すチャンスが自分に巡ってきた」
と考えるべきだと大南さんは言っています。
いつか誰かが前例を作っているからだ、と。
さて、アイデアキラーに遭遇したら、どう対処するべきか。
グリーンバレーでは、こういう言葉を使ったそうです。
「できない理由より、できる方法を考えましょう」。
アイデアキラーの意見は、すごく説得力を持つ、と大南さんは言います。
というのは、その場の多くの人が失敗体験を共有しているから。
「ああ、そうでしたね、できなかったですよね」と、
その意見に引っ張られてしまいます。
でも、最初からできないと決めつけると、アイデアはまったく出てこなくなる。
だから、まず、「できる方法を考えてみませんか?」で、その場をポジティブにする。
何か良い方法がないか考えてみるという姿勢で話し合うと、
良いアイデアが次々に出てくるようになると言います。
良いアイデアが出たら、次に使う言葉は「とにかくやってしまおう」。
やってみることによって物事の展開を変える。
そこで、課題や問題をあぶり出していき、
一つひとつ潰していくほうが物事が効率的に動いていくと大南さんは言っています。
この記事を読んで思ったこと。
私はアイデアキラーはいてもいいと思います。
こういうリスクもありますよ、過去にこういうこともありましたよ、
と言ってくれる人は必要だと思うのです。
でも、彼らの「難しいですね」に引っ張られて、
「だよね、じゃ、やめようか」と、なっていては
何も始まらないなあと改めて思いました。
「そうだね。でも、できるかもしれないから、できる方法を考えよう」。
そして、「とにかくやってしまおう」
いい言葉ですねぇ。
その変化に対応するのは誰なのか?
「結果は出なかったのですが、
最後の最後まで諦めないで走り切るという姿を見せられたと思います。
この4年間は、選手たちと本当に楽しくサッカーを積み上げてこられて、
本当に幸せだったと思います。
スタッフも選手も本当によくやってくれた。誇りに思います」
先日のFIFA女子ワールドカップ・カナダ大会決勝で
2度目の優勝を手にすることができなかった「なでしこジャパン」。
チームを率いる佐々木則夫監督は試合後、こう話しました。
試合終了の笛が鳴った直後は、涙していた選手たちも、
間もなく「私たちはよくやったんだ」という笑顔になり、
お互いを称え合っていました。
私は、佐々木監督がどうやってこのチームを作り上げたのか、
以前からとても興味がありました。
あるインタビュー記事にそのヒントを見つけたので、ご紹介します。
佐々木監督は、2006年に男子チームから
女子チームのコーチに移ったのだそうです。
その時、ものの見方をがらっと変えなければいけないと感じたと言っています。
たとえば、体格のこと。
なでしこジャパンは女子サッカーチームの中で、
世界で一番、平均身長と平均体重が低いチームです。
他国の選手に比べ、手足が長くないということは、
ボールまでのリーチが短く、届きづらい。
普通に考えると、これはプラスの条件ではありません。
でも、リーチはなくても、コンパクトな分、
スライディングしてから立ち上がるスピードが速い。狭いエリアでの動きも機敏。
だから攻撃から守備、守備から攻撃への身体、そして頭の切り替えが実に素早い。
これは武器だ、と。
佐々木監督は今では
「日本の女性は、なんてサッカーに適しているんだ」と思っているのだそうです。
「変化に対応するのは君たちだ。創意工夫をするのは君たちだ」
そう言い続けることで、サッカーをするのは監督ではなく自分たちなんだ、
という考えを浸透させてきたとも監督は言っています。
たとえば、試合中、相手チームの選手交代で、
まだこちらがデータを所有していない
一人のクリエイティブなディフェンダーが入ってくる。
それだけで、ゲーム状況は一変するのだそうです。
そんな時、どうすべきかを考えるのは監督ではなく選手だ、と佐々木監督。
指示を出したくなることもあったのだそうですが、そういう時こそぐっとこらえて、
選手たちの創意工夫に任せてきたのだそうです。
「すると、選手たちの間に『集団知性』と言えるものが芽生えて、
チーム全体の変化への対応力が高まりました」
と佐々木監督は言っています。
千変万化する国際大会での試合を勝ち抜いていけたのは、
そんな力があったからだと確信しているのだそうです。
マイナスと感じることをむしろ武器にして戦ってこられた。
そして、自分たちの工夫で、自分たちがサッカーを進めてきた。
なでしこの選手たちがいつものびのびとプレーできる理由がわかった気がしました。
グローバル化が急速に進んでいるビジネスの世界。
いつ、どんな変化がやってくるかわからない状況で私たちは仕事をしています。
いざという時に、その変化に対応していくのは会社なのか?自分なのか?
その時、私たちは自信を持って、のびのびとプレーできるのか?
普段から準備しておくべきことがあるなあと感じました。