その映画、「なぜ」好きなの?
次男が同じ映画を繰り返し観ています。
私が知っているだけでも10回以上。
何がそんなに好きなのか気になり、
「なぜ、この映画が好きなの? 」と聞いてみました。
すると、しばらくして、「音楽」という答えが返ってきました。
私は、「へえ」と思ったものの、
じゃあ、映像作品じゃなくてもよくない?
という疑問が湧いて、もう少し知りたい、と思い、
「あとは? あとは?」と続けたところ、
「・・・・うるさい」
はい。まあ、そうなりますな。
思春期真っ盛りですし。私もそうでしたから。
若い頃は、「なぜ好きなのか」なんて
あまり考えないですよね。
自分自身のことを思い返すと、
私には、むしろ「なぜ好きなのか」を突き詰めて考えたり、
説明することはかっこよくない、
と感じていた時期がありました。
音楽などに関してはとくに。
「考えるな、感じろ!」
と思っていたのかもしれません。
今思うと、何かを誰かと「共有したい」
「同じ思いの人と話したい」という
気持ちも強くなかったように思います。
「私はこれが好き」
「あ、あなたはそれが好きなのね」
「オッケー」
というように。
あ、一言でいうと、自分勝手だった、ということですね(笑)。
さらに考えてみると、日常生活で「なぜ?」を
あまり聞かれることがなかったから、
ということもあるかもしれません。
子どもは、だいたい幼稚園くらいまでは、
なぜなぜマシーンなので、
「なぜ?」「どうして?」を連発するのですが、
そのうち、学校の先生や周りの大人の反応から、
「なぜ?」をあまり聞いてはいけない、と学び、
聞かなくなっていってしまうように思います。
現在の日本の教育は、
暗記7・思考3だそうですから、
「なぜ?ばかり考えていないで、これを覚えよう」
ということになってしまっても、
仕方ないのかもしれません。
「思考力とはどんな力か?」という問いに、
『批判的思考 ワードマップ』の著者で、
認知心理学が専門の京都大学の楠見教授は、
論理的に考え、自らを振り返る「批判的思考力」や、
「創造的思考力」などがある、と説明しており、
創造的問題解決のためには、
これらが一体となって働くことが必要だと語っています。
批判的思考力とは、誰かを批判する力ではなく、
自分自身が正しく考えられているかを振り返って考える力。
証拠に基づいて論理的に考えることと、
目的に対して正しく考えることができたかを
振り返ることだそうです。
それには、問いを立てる力が必要。
その基礎になるのが「なぜ?」なのではないかと思いました。
最近、教育現場における「批判的思考」についての
OECDの調査を目にしました。
調査によると、日本の中学校の教員が、
教育現場で、生徒に批判的思考が必要な課題を出したり、
批判的思考を促している割合は、わずか24.4%。
日本の授業を思い浮かべると、
このくらいの数字だろうな、とも思えますが、
なんとこの数字、46カ国中、最下位です。
ちなみに一つ上のノルウェーが65.6%。
日本の子どもたち、日本の未来、なんとも心配になりますが、
まず大人として、職場で、家庭で、
できることをやらなくてはならないですね。
私は、引き続き、思春期中学生相手に、
「なぜ?」をしつこくない程度に(?)
聞き続けたいと思いました。
フラットな関係って?
石田衣良氏の人気小説
『池袋ウェストゲートパーク』(IWGP)が
アニメ化され、10月から放送が開始されています。
IWGPは、池袋を舞台に、
主人公マコトが、友人タカシ率いるストリートギャング
「Gボーイズ」とともに、社会が抱える様々なトラブルを
解決していくミステリー。
マコトは、Gボーイズには属さず、
普段は実家の果物屋を手伝っていますが、
あるトラブルを解決したことをきっかけに、
名トラブルシューターと認識されるようになり、
厄介なトラブルが起こる度に、依頼され、出動していきます。
ちなみに謝礼は受け取りません。
誰に対してもフラットで、相手が副都知事であろうが、
小学生であろうが、まっすぐにぶつかっていくマコト。
飄々としていますが、相手の気持ちを繊細に捉え、配慮する一面も持っており、
著者の石田衣良氏は、そんなマコトを「自分の理想像」と語っています。
さて、私たちは、人間関係や組織において
フラットという言葉を使います。
フラットな人間関係、フラットな組織とは
一方的ではないということかなと思います。
みんなが自分の意見を言えて、みんなが他人の意見を聞く。
しっかり話し合える。そんな関係です。
フラットな関係をつくるために、まず必要なことは何でしょうか。
相手が変わっても、偉ぶることなく、
卑下しない、接し方のスタイルを確立することでしょうか。
IWGPのマコトを見ていると、そうではない気がしてきます。
フラットな関係づくりのためにまず大切なことは、
自分の接し方のスタイルの確立ではなく、
相手の気持ちを考え、受け入れることではないかと思うのです。
相手を受け入れた上で、違うと思ったことは違うと言う。
マコトがフラットに接することができるのは、
度胸がいいからという理由だけではなく、
相手の気持ちをしっかり考えているからだろうと勝手に分析しました。
そして、フラットな関係づくりには、安心感も必要ですよね。
なかなか組織でフラットな関係が実現しないのは、
「こんなことを言ったら、評価が下がるかな」
「こんなことを言ったら、上司の耳に入るかもしれない」
「変なことを言う人だと思われたくない」
など、様々な不安があるからだと思います。
そんな不安を取り除くには、お互いがオープンでいることが必要。
フラットでオープンな組織、というように、
フラットとオープンがセットで使われることが多いのは、
そういう理由なんだろうなと思いました。
いやあ、そうは言っても、簡単じゃないですよね。
簡単だったら、とっくに世の中フラットになっている。
でも、どうせ実現しないんだから、と諦めると、
どんどん元気がない社会になりそうです。
まずは一人ひとりが、普段の生活で、
少し意識してみることが必要なのかもしれません。