とりあえず、言ってみる
最近、これいいなあ、と感じたものに、
大分県杵築市の図書館が導入している「預金通帳型の読書カード」があります。
見た目は銀行の通帳そっくり。使い方も同じ。
本を借りると、情報が通帳に印字されるしくみです。
借りる側は、本を読めばよむほど通帳の印字が増えるので、
貯金がたまっていく感があって楽しい。もっと本を読もうという気になります。
そして、これはいい思い出になりますね。
あとから見返したとき、ああこの時期こんな本を読んでいたな、
と思い返すことができるのはすてきです。
私は、子どもたちの過去のお薬手帳を見ながら、
そうそう2歳の誕生日にインフルになっちゃったのよね、
なんて思い出して懐かしい気持ちになりますが、
読書通帳ならもっといい時間を思い出せるはずです。
さらに想像をふくらませると、この読書通帳、自分だけの思い出でなく、
自己紹介のいいツールになったりもするかもしれません。
採用や婚活に使えたりして。うーん、いい取り組みです。
Twitterでも大変話題になっているようで、
作家の平野啓一郎氏も「すごくいいと思う。一生の思い出になる」と
コメントしています。
しかしこれ、考えてみると、すごい大発明というわけではありません。
ちょっとした、気の利いたアイデアから生まれた取り組みです。
たぶん「利用者が自分の借りた本の記録が見られるような
カードがあったらいいですよね」というアイデアを出した人がいて、
「いいね、それ」と言う人がいて、
「通帳型なんていいですよね」と言う人がいて、
「おー、すごくいいね」と広がって実現したのではと思います。
ここで大事なのは最初に「こんなカードがあったらいいですよね」と
アイデアを口にする人と、
それに対して「いいね、それ」と言う人の存在です。
ここからは私の勝手な想像ですが、
多くの人は、とんでもなくすばらしいアイデアでなければ
アイデアと呼べないと思い込んでいて、
ちょっとおもしろいことを思いついても
あまり口にしないのではないかと思います。
理由は、周りから能力が低いと思われたくないとか、かな。
会議で発言しないなども同じパターンかもしれません。
でも、そんな中でも「こんなこと考えちゃったんですけど」という人が出てくる。
しかし、それを聞いた人が「うーん、そのレベルだと、
みんな考えてるんじゃない?」などと言ってしまう。
そうやって多くのアイデアが消えていっているのではないかなと想像するのです。
その中には、今回の読書通帳のように、
実現すれば「すごくいい!」と思われるものもあるかもしれません。
そう考えると、もったいないなあと思ってしまいます。
なので、何か思いついたら、
くだらないかもしれないと思ってもとりあえず言ってみる。
だれかが何かのアイデアを口にしたら、
いったん前向きに聞いてみるというのはどうでしょう。
そこで「お、いいね」となれば、
盛り上がっているところには人が寄ってくるので、実現に向かうかもしれません。
読書通帳からそんなことを考えました。
ちなみに私の最近の「こんなこと考えちゃったんですけど」は、
レジでもらう紙のレシートをなしにして、
スマホをかざしたら買い物情報が取り込めるようになってくれないかな、
というもの。
それが家計簿アプリと連動して記録されたらすごくいい。
環境保護にもなり、便利。どうでしょうか。
「潔い」は、やはりステキ
年末、我が家にダイソンがやってきました。
猫2匹分の毛、子どもたちが外から持ち込む砂が
ラグからきれいに取れず、いろいろ調べた末、
根こそぎゴミを取ってくれそうなアニマルプラスという種類の
ダイソンコードレス掃除機を購入したのです。
商品が配達された日、玄関先で受け取った箱を見て、
私は「へえー」と思いました。
箱の正面と背面は製品の写真と商品名のみ、側面も製品写真。
でも、もう片方の側面には、ジェームズ・ダイソン氏の写真と言葉、
そしてダイソン社の姿勢を表すこんなコピーが書かれていました。
「『失敗を重ねても挑戦し続けること』。
これがダイソンの発明と問題解決の源です。
ジェームズ・ダイソンは、5年の歳月と5127台の試作品を経て
サイクロン技術を開発しました」
私が感じた「へえー」の中身はこれです。
こんなことが商品の箱に書かれているっていいなあと思ったのです。
思わず、そばにいた次男を呼んで
「こんなに試したんだって。すごいね。
私なら100台試さないうちにもうダメかなと思っちゃいそうだけど、
5127台ってすごいよね。諦めないって大事だね」と言うと、
「すげえな」と呟いていました。
こういう製品パッケージを受け取ってみて、思いました。
これは単に掃除機を買って、受け取ったという気持ちじゃないな、と。
なんというか、ダイソン社の理念や姿勢を受け入れた気分になるのです。
ファンになったということだと思います。
消費者がただ製品を買ったという気分にならないメーカー、
ほかにもあると思います。
たとえばApple社。
買ったというよりも、オーナーになったという感想でしょうか。
ちょっといい気分になる。
好きな車を購入したときと似ているのかもしれません。
あとは、日本の最近のメーカーで言えばバルミューダ社とか。
それ、デザインがかっこいいだけじゃん、ってことになりそうですが、
まあそこも含めてこれらのメーカーに共通していることを見つけました。
それは、
自信があること。
わかりやすいこと。
媚びないこと。
潔いこと。
そうです。
自信があるから、機能もデザインもわかりやすいし、媚びなくていい。
だから潔い。
買ってください、買ってあげますという構造になりにくい。
こういう関係、いいですよね。
仕事関係も、人間関係も、こういうリスペクトがある関係は
やはりステキだなと改めて思いました。
さて、肝心のダイソンの性能。これがすごいのです。
踏み固められてカッチカチになった我が家のラグの毛を
耕運機のようなパワーで根っこから起こし、
底にたまった猫毛と砂を見事にかき取りました。
ダストボックスを眺めながらこんなにニヤニヤしたことはありません。
挑戦し続けてくれてありがとう、ジェームズさん。