スマホ、なくても平気かと思ったら
先日、高校時代の友人とランチの約束をしました。
約束の日、最寄り駅まで自転車で向かった私は、
家にスマホを置き忘れたことに気づきました。
取りに帰れば30分の遅刻です。前日やりとりしたLINEでは、
「町田駅、小田急の東口あたりに12時前くらいね。着いたら電話して」と、
ゆるく場所と時間が決まっていました。
私と彼女は30年以上の付き合いで、スマホがない時代でも
日本各地はもちろん、海外でも会う約束をして食事をしたりしてきました。
なので、彼女とは会えるという妙な自信があって取りに戻ることをやめ、
スマホなしで出かけました。
さて、約束の場所。かなり待ちましたが彼女は現れません。
東口が数カ所あるのかも、そもそも東口じゃなくて西口だったのかも、など、
ありそうなことをいくつか想像して移動してみましたが、彼女の姿はなし。
なんとなく、こりゃ会えないかも、という気がしてきました。
困った。どうしようか考えながらウロウロしていると公衆電話を発見しました。
ラッキー! ...なのか?
自宅、実家、職場以外で私が記憶している番号は夫の携帯だけ。
私の友人とは家族ぐるみの付き合いなので知っているはず!
早速、夫に電話をすると、たぶん番号がわかるとのことだったのですが、
コインで公衆電話を使っているので長く待てず、
取り急ぎどこで待っているかを伝えてもらうようにして電話を切りました。
ここからの大・伝言ゲームとてんやわんや劇場の詳細は省略します...。
が、簡単にお伝えすると、夫は彼女の旦那さんの番号しかわからず旦那さんに連絡、
その際「小田急東口」を新宿と思い込んで新宿と伝える、旦那さんは彼女に連絡、
なぜか新宿小田急東口で私の夫が待っている、となる...。
まったく会えなそうですよね。私も会えないかと思いました。
でも、会えました...。1時間後に。
結局スマホを取りに戻ればよかった、という話です。すみません。
が、私がこの一件で気づいたことは
「普段、スマホに頼りすぎ!」ということです。
後で連絡を取り合うことを前提にしているので、約束もしっかり確認しない、
先のことを想像することもしなくなっている、判断力も鈍っている、
伝言力も鈍っている。あ、スマホのせいばかりではありませんね...。
でも、やっぱりスマホなしでは行動できなくなっているのは確かです。
脳の学校の代表で、医学博士の加藤 俊徳氏は、スマホに頼りすぎると、
脳の「聴覚系をつかさどる部位」が使用されず、衰えていくと指摘しています。
脳というのは、聴覚系や視覚系、思考系など、部位によって働きが違いますが、
スマホばかり見て脳の成長が視覚系に偏ってしまうと、聴覚がなおざりになる。
聴覚系は理解系や記憶系と密接な関係にある非常に重要な脳の部位なので、
聴覚系の働きが阻害されると、
物事をきちんと理解し記憶に基づいて行動できなくなるということなのです。
そうなると、実際にどのようなことが起きるか。
加藤氏は、デジタルネイティブの若い世代ほど、
たとえばオフィスで電話を受けたとき、相手が怒っているのか、困っているのか、
声から状態を想像することができず、
間違った対処をしてしまいがちだといいます。
なるほど...。我が家には思春期青年がいますが、思い当たりますね...。
そして私も、しっかり耳から情報をキャッチしているかというと、
そうではないかもしれません。
大まかに聞いて、後からネットで調べるなんてことをやっているように思います。
いけませんね。
なんだか人間という生き物としての能力が失われていっているような気がしてきました。
「デジタルデトックス」も浸透しつつあります。
スマホなしで能力が低下していないか、
時折確認してみるといいのかもしれません。
「考える」を考える
今年の4月に社会人になった世代は、「フルゆとり世代」と呼ばれています。
唯一、小学校入学から高校卒業まで「ゆとり教育」を受けた若者たちです。
青年期にはスマホがあった世代のため、スマホネイティブとも呼ばれています。
私が、「フルゆとり」という言葉から受ける印象は、
「かなりマイペースでガツガツしていない、
どちらかというと消極的で、ゆったりした人たち」というところですが、
実際のところはどうなのでしょうか。
新入社員研修を手がける株式会社ファーストキャリアが行った
「新卒・若手層育成研究所」調査レポートを見てみました。
調査結果によると、今年の新入社員は、
「積極的で活発な社員」なのだそうです。
過去5年のアンケートでは、新入社員の行動特性として、
「まじめ・素直」「周囲との関係性を築くことが早い」「集団では出過ぎない」という
「おとなしくて同調性重視」の傾向が多く見受けられましたが、
今年は「自分の考えを持ち、積極的で発言力がある」
「自分の考えに合致しないことに関しては、時に排他的になる」との回答が増加。
新たに「積極的で自分基準重視」の傾向が加わったことで、
これまでの「おとなしくて同調性重視」の傾向を持つ新入社員との
二極化が進んでいると捉えられる、とまとめられています。
回答をもう少し詳しく見てみました。
注目したのは、本人たちが意識しているプラス面の項目です。
1位「コミュニケーション能力が高い」(60%)
2位「向上心、積極性が高い」(42%)
一方で、マイナス面の項目は、
1位「主体性がない、積極性にかける」(46%)
2位「控え目でおとなしい、内向的、周りに流される」(33%)
むむ? プラス面の裏返しのような項目です。
これはどういうことなのか。私なりに考えてみました。そして、
これは「自分で考えることに慣れていない」ということなのかも、と思い至りました。
気づいたときにはスマホがあった世代ですから、
SNSの影響もあって、外に向かって積極的に自分をアピールするのは得意。
だから、コミュニケーション能力が高いにはイエスだし、
向上心、積極性もイエス。ノリがいいとも言えますね。
でも、いざ職場でのリアルなコミュニケーションとなると、
ノリでは行けないので、どうしていいかわからなくなる。
考えることに慣れておらず、自分の考えがまとまっていないので、
控えめで内向的になってしまう、というところなのかもしれません。
と、偉そうに言ってみましたが、
この世代は「フルゆとり」なんて言われているので、興味深く語られるだけで、
新入社員が「考えることに慣れていない」のは当然では?
と、これを書きながら思ってきました。
私は、バブル崩壊直後に社会に出ましたが、
まだまだバブル世代の若者だったことと、
入社した会社が自由な社風だったこともあり、
今考えるとゾッとするほど生意気な新入社員でした。
勢いだけで、考えなんて全然なかったと思います。
考えている風には振る舞っていましたが(汗)。
では、「考える」とはどういうことなのでしょう。
『ぐんぐん伸びる子は何が違うのか』の著者であり、
現在は子育てをする保護者向けだけでなく、社会人向けの研修も行う石田勝紀氏によると、
「考える」状況になるのは、以下のいずれかのことをしているときだと言います。
「自分の言葉で語れること(What)」
「疑問に思うこと(Why)」
「手段や方法を思いつくこと(How)」
職場よりの言葉に置き換えると、
「課題は何か?(What)」
「なぜそうなのか?(Why)」
「ではどうすればいいのか?(How)」
どうでしょうか?
そう言われてみると考えているとはいえないかも、なんてこともありそうです。
さて、指導する立場に立ったとき、注意すべきことがあると石田氏は言っています。
それは、「アウトプットの質を問うと台無しになる」ということ。
「質問をして、相手が答えられなくてもいい」ということを知っておくことだそうです。
確かに、「考える」と「考えたことをまとめて説明する」は、別のスキルです。
考えることを始めたばかりの人に、
「説明できないのは、考えていない証拠だ!」などと言うと、
うまく説明することに意識が向いてしまい、考えることをやめてしまいます。
これは、子どもにも、大人にも言えることですね。
ちなみに、前述した調査で、「フルゆとり」世代が職場に望むことの上位が
「実践の機会を与えてほしい」(52%)と
「自ら考える機会を提供してほしい」(50%)でした。
考えさせようと思っていたのに、どんどん考えなくなってきた、
なんてことのないように注意したいものです。