ディレクターの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーです

ブログ:2018年9月

スタッフの阿部が日々の気づきをつぶやくコーナーアベログ

ニュース番組で、全米オープン優勝で大注目の大坂なおみ選手と
サーシャ・バインコーチのやりとりが取り上げられていました。


自分のプレーに納得がいかずに
膨れっ面でベンチに腰掛けている大坂選手に向かって
「大丈夫、君はできるよ」と声をかけるバインコーチ。
「全然、ダメ。できない」と落ち込む大坂選手。
しっかり目を見つめながら
「みんなわかっているよ。君はできるよ」と、またコーチ。
うつむいたまま首を横に振る大坂選手。
というようなやりとりだったと思います。


昭和の熱血スポーツ指導者なら、
「そんなにやる気がないなら、帰れ!」
などと言ってしまう場面なのかもしれません。
しかし、バインコーチは彼女がどんなにネガティブに反応しようと
落ち着いたトーンで声かけを続けていました。
これを見たとき、コーチの力は本当に大きいなあと感じました。


バインコーチはインタビューでこんなことも言っていました。
「彼女は完璧主義で、自分自身に厳しすぎるところがあるから、
僕は真逆でいなければならない。だから、
『大丈夫。地球は丸くて、草は青いさ、すべてうまくいく』
って言うんだ」


こうして徹底的にリラックスさせ、
ムードメーカーとして励まし続けた結果が全米オープン優勝です。
相手をしっかり理解した上で支えることの大切さ、
言葉の力を改めて感じます。


ペップトークと言われる、米国生まれの「励ます技術」があります。
もともとは、スポーツの試合前などのシチュエーションで、
コーチが選手に向かってかける激励のコーチング話術ですが、
現在は教育現場や子育て、企業の育成の場面でも使われているようです。


ペップトークには4つのステップがあるといいます。
 (1) 受容(事実の受け入れ)
 (2) 承認(捉え方変換)
 (3) 行動(してほしい変換)
 (4) 激励(背中の一押し)

受容は「相手の感情や状況を受け入れて、共感すること」。
たとえば、心配そうな顔をしている人に向かって
「心配してるの?もっと元気を出そう」と言うのではなく、
「心配なんだよね。誰でもそうなると思うよ」と言うこと。


承認は「状況をポジティブに捉え直すこと」。
たとえば、先ほどの心配している人には続けて
「心配なのは、本気で取り組んでいる証拠だよ」と言うこと。


行動は、受容と承認でポジティブにリーディングした後、
まさに「今してほしいアクションを伝える」ステップ。
そのときに大切なことはやはりポジティブな言葉です。
たとえば、「焦らないでね。ミスをしないようにね」ではなく、
「思いきってやってきて。楽しんできて」と言うこと。


激励は、「心に火をつけ、奮い立たせること」。
「大丈夫。君はできる」「思いきって暴れてこい」などの激励系のほか、
「みんなで応援しているよ」「ゴールで待っているよ」という、
見守り系の声かけもあります。


いかがでしょうか。
大坂選手のバインコーチは、
普段からこうしたトークで寄り添っているのでしょうね。
そして、最後の背中の押し方が抜群にうまいのかもしれません。
言葉によって最高の結果を引き出す、すごいことですよね。


最後に、アメリカンフットボールで社会人日本一と学生日本一が戦う
「ライスボウル」でのペップトークをご紹介。
2009年、社会人日本一の松下電工との試合を前に、
緊張と不安でガチガチになっていた立命館大学の選手たちを
励ました古橋監督の言葉です。
このトークの後、選手たちはビッグプレーを連発し、
見事勝利を納めています。


「男にはな、人生をかけて戦わなあかんときがある。
相手がどんなに強くても、相手のほうが絶対に有利だと言われててもな、
立ち向かっていかないかんときがある。


松下電工が強い、有利だと言うのはマスコミが言ってるだけやろ。
フットボールの内容、チームワーク、どれを取っても我々のほうが上や!
それくらいの力をおまえら一人ひとりが持っとる!
おまえらならできる!
おまえらならできるんや!


やろう!
このチームで最後の最後までがんばって、
力を出し尽くして今日は勝つ!


さあ、勝つぞ! 1、2、3、GO!」

5年ほど前、次男の小学校のクラス懇談会に参加したときのことです。


次男のクラスは、
学年の中でも特に落ち着きがないクラスだと言われていました。
途中で担任が体調を崩して休みがちになり、
そのまま長期で休みに入ってしまったことが大きかったのだと思いますが、
子どもたちがソワソワしていて、
保護者も何かにつけて過剰に反応するような状況でした。


さて、懇談会。
ベテラン先生の後を継ぐことになった新任の男性の先生から、
最近のクラスの様子について説明が一通りありました。
クラスに落ち着きがなく、
いじめっぽいことも起きているというようなことでした。
最後に保護者の方から何かありますか?と聞かれました。


小学校に入ったばかりの子どもたちが、
ピリピリした雰囲気の中で過ごすのはかわいそうだし、
それではなかなか仲良くならないと感じていた私は、
「1年生らしい、もっと楽しくてクラスが仲良しになるような
イベントも盛り込んではどうでしょうか」と提案しました。
長男のときは、
誕生日を迎える子にクラス全員がメッセージを書いて贈ったり、
給食のときに牛乳で乾杯する、
というようなことをしていて、とても楽しそうだったからです。


周りの保護者からも、
それはいいですねと言っていただき、
そこからは新たな提案も出てきました。
なかなか充実した懇談会になり、
終了後、保護者数人と「いい懇談会だったね」なんて話もしました。


ところが後日、ほかのクラスのお母さんからこんなことを言われました。


「1組の懇談会すごく荒れたんだって?
なんか、クレームする人がいて長引いたって聞いたけど」


おっと、びっくり!
私は、
「あ、それ私だ。クレームしてないし、懇談会は荒れてなかったよ」
と笑いながら言うと、彼女は
「あ、そうなんだ」と困った様子で言っていました。


ああ、これなんだなあと思いました。


会は何事もなく終わるのがいい、
と思われている場が多いので、
発言や提案はクレームと捉えられてしまいがちなのです。


まあ、学校の懇談会というものは、
「何かありますか?」
「ないようですので、これで終わります」
というのが、いつもの形なので、
「はい、あります!」とだれかが言うことで、
帰ろうと思っていた保護者が帰れなくなるということが起こります。
迷惑に思う人が出てくるのもわかります。


そしてこれ、ビジネスの会議でもそうですね。
「何かありますか?」
「ないようですのでこれで進めます」
で終わるはずのところ、
だれかが発言することで長引きますし、
その場が「このタイミングで、それ言うか?」となることもありますね。


こうしたことが起こるのは、
参加する人々の「場の捉え方」が違うからだと思うのです。
「意見を言う場」と思っている人と、
「意見は言わずに、何事もなく終わらせる場」と思っている人が
同じ会議に参加しても、うまく進むはずがないと思います。


世の中、「発言しよう」「言いたいことは言おう」という流れがありますが、
言える場が整っていなければ、
やはり言えるようにはならないと思うのです。


同じように、
「コミュニケーションの基本は聞くことから」とも言われますが、
そもそも聞く場だと思っていなければ、
聞こうともしないのだと思います。


なので私は、まず、
しっかり「場を設定し、場を進行する」ことが
大事なのではないかなあと感じます。
つまり、ファシリテーションです。


といっても特別なスキルのことを言っているのではありません。
会の始めに、
「この場の目的は~です。
~な意見をどんどん出しましょう」
と進行する人が言うだけでも、
「え?意見するなよ」と思う人が少なくなると思いますし、
「このタイミングでその意見?」となる会議の場合は、
「何かありますか?」ではなく、
「~について、何かありますか?」と、
絞るだけでも違うのだと思います。
ファシリテーションと言うと大げさですが、
本当にちょっとした場のしきり方の工夫で変わってくるのだと思います。


と、ここまで書いて、
自分自身のことを考えてみると、
目的がわからない会議や何についての意見が求められている会議かわからない場、
あるなあと思いました。


もっと言おうよ、もっと聞こうよ、の前に「場」について、
意識を向けることを忘れないようにしたいと思います。

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