それ、事実? 感情?
「エモーションとファンクションの分離が
うまくいかないことが多い」
こう言っていたのは、岡田武史さん。
先日終了したサッカーW杯開幕前のトーク番組での発言です。
岡田元代表監督は、
日本ではエモーション(感情)とファンクション(機能)を
ごっちゃにしてしまいがち、と語っていました。
たとえば、
監督の戦術や選手起用の仕方が気に入らない、
あの監督は好きじゃない、
あの監督が率いる日本代表チームは応援しない、
というようなことだといいます。
アルゼンチンなどの南米のチームも、
監督に対して国民はめちゃくちゃ批判したり、意見したりしますが、
だからと言って自国の代表チームを応援しないなんてことはない、と。
それとこれとは別だ、と言っていました。
なるほどなあ、と思いました。
これ、普段の暮らしの中でもよくあることなのではないでしょうか。
たとえば、部下の仕事の仕方に問題がある。
そのことだけにフォーカスして対処すればいいのに、
あいつはダメだ、と人格まで否定してしまう。
上司のやり方に同意できない。
そのことについて意見して、対処するべきなのに、
上司の人柄そのものが嫌いになる。
だから、あの上司には協力しない。
なんだか、ドラマのシーンみたいですが、
実際にあることですよね。
そう考えていくと、「機能」と「感情」を区別するって、
結構難しいのかもしれません。
これと似たようなことに、
「事実」と「感情」の混同もありますね。
元NHKキャスターで、スピーチコンサルタントの矢野香さんが、
企業実務に関する記事の中で
「伝わるプレゼンは、事実と感情を混同させないこと」と言っています。
矢野さんによると、
表現は、話の内容に関する「言語表現」と、
表情や声の高さ・大きさなどによる「非言語表現」で構成されていて、
言語表現では、「事実のみを話す」ことがとても重要なのだそうです。
たとえば、次の例文。
どの部分が「事実のみ」から逸脱しているでしょうか。
「最近、社内の幅広い世代の社員より挙がっていたたくさんの意見を参考に、
新しい経理管理システムを導入しました。
システム構築にはおよそ2年もの月日がかかりましたが、
やっと完成し、かなり良いものになりました」
矢野さんは、事実のみの内容にするためには、
「約、この頃、最近、およそ」などの「ぼかしの言葉」と、
「やっと、ようやく、かなり」などの「評価の言葉」を
削除しなくてはならないと説明しています。
とくに、「評価の言葉」には感情が含まれているので、
ビジネスの現場では、
オフィシャルな発言だと受け取られにくいといいます。
先ほどの例文から「ぼかしの言葉」と「評価の言葉」を削除し、
適当な言葉に置き換えた例がこちら。
「3年前から、社内の20~40代の社員より挙がっていた203件の意見を参考に、
新しい経理管理システムを導入しました。
システム構築には1年10カ月の月日がかかりましたが、
このたび完成しました」
ポイントは、
ぼかしの言葉の部分に正確な数字や固有名詞を入れ、
評価の言葉も正確な数字に置き換え、
「かなり良いものになりました」部分は感情が入った感想なので、とること。
どうしても感想を言いたいときは、
「担当者としては、かなり良いものになったと自負しております」など、
担当者個人の感情だということを明確にすることが重要だそうです。
うーん、これはビジネスシーンのみならず、
どんな場面でも必要なスキルですね。
私は、事実と感情、普段だいぶ混同しているかも、、、。
でも、これがわかっていると、
話の内容をすっきり整理できそうな気がしてきました!
みなさんは、いかがですか?
「失敗していい」、ほんとに思ってる?
『失敗図鑑』という本を買いました。
この本には、ライト兄弟や夏目漱石、アインシュタインなどの「成功した」人たちが、
過去にいかに失敗してきたか、が書かれています。
イラストが多く、おもしろく編集されていて、
我が家の次男が喜んで読んでいます。
本当は長男が暇つぶしに読んでくれればと思ったのですが、
次男が読み終わったら、回してもらおう、、、。
なぜ、この本を買ったかというと、こんなことがあったからです。
半年ほど前でしょうか。
長男が「明日、中学校で枕草子の暗唱テストがある」
と教えてくれました。
聞くと、完璧に暗唱できたら合格、
少しでも間違えるとマイナスポイントがつくと言います。
息子は『冬』まで暗唱できるまであと一歩というところで、
なかなか完璧にならないと言い、
「だから『春』しか暗唱しない。みんなそうしてる」と呟きました。
「え? ちょっと間違えても全部暗唱するより、
一部だけでも正確に暗唱することが求められてるの?」
びっくりしてそう聞き返すと、「そうだよ」と。
あーあ、チャレンジしない若者養成か?、、、と、がっかり。
考えてみれば、
「失敗はどんどんしよう」とか「失敗から成功が生まれる」
などという言葉、ビジネスのサイトや本ではよく目にしますが、
実際はそんなに耳にしません。
むしろ、「ミスのないように!」は
毎日のように聞こえてくるように思いました。
東京理科大学大学院イノベーション研究科の高橋克徳教授によると、
日本人の若い世代(29歳以下)が
世界の中で突出して自分から踏み出していくことや、
リスクがあってもチャレンジすることに対して
慎重になっているのだそうです。
世界価値観調査を見ると、
「新たなアイデアを考え出すこと、創造的であること、
自分のやり方でできることが重要だ」という質問に、
60カ国平均が78.9%であるのに対し、
日本の29歳以下は45.9%しか肯定的な回答をしておらず、
「冒険することやリスクを冒すこと、刺激的な生活をすることは重要だ」
という質問には60カ国平均が62.3%に対して、
日本の29歳以下はわずか22.8%だと高橋教授は指摘します。
内閣府が出している「子ども・若者白書 平成26年版」でも
同じ傾向が見られるそうで、
日本の20代若者たちが特に、
ほかの国の若者たちよりも、自分の長所が見えず、
うまくいくかわからないことには意欲的に取り組めないと感じ、
未来は変えられないと悲観的になっていることがわかるのだそうです。
はぁ、、、とても残念でもったいない!
だって、若い世代が勝手にこういう思考になってしまうわけじゃないですもんね。
私も含め、周囲の大人や環境がそうしてしまっているのだと思います。
たまに「チャレンジしろ」と言いながらも、
無意識にチャレンジさせていない、、、。
では、大人が若い世代にチャレンジさせないのはなぜなのでしょう。
先ほどの世界価値観調査を見ると、創造的で自己主導的であることも、
冒険的でチャレンジすることも、年齢を重ねるほど
さらに肯定派の割合が減っていることがわかると高橋教授は言っています。
「新たなアイデアを考え出すこと、創造的であること、
自分のやり方でできることが重要だ」という質問については、
29歳以下で45.9%が肯定していますが、
30~49歳では37.8%、50歳以上では30.9%。
「冒険することやリスクを冒すこと、刺激的な生活をすることは重要だ」
という質問も、29歳以下で肯定しているのが22.6%に対し、
30~49歳では8.4%、50歳以上では5.6%と極端に低い数値なのです。
つまり、「最近の若手は自分から踏み出さない」「チャレンジをしない」と
言っている先輩世代、
上司世代ほど、実は自分から踏み出さず、
チャレンジを嫌っているのです。
お笑い芸人で、東工大の非常勤講師も務めるパトリック・ハーランさんが
ブログでこんなことを言っています。
「日本には『失敗が許されない空気』があるのではないでしょうか。
僕が日本で暮らしていて感じるのは『世間の目』の厳しさで。
特に失敗をおかした時の『世間の目』は他の国よりずっと厳しいと思う」
「アメリカでも失敗や間違いをおかした時には叩かれますし、
メディアも厳しく追及します。
でも半年くらい経ったら、周りは忘れていることが多いし、
本人も復活して、ちゃっかり再スタートしていたりする」
「日本人は和を保つことを優先し、周囲に迷惑をかけないよう、
自制して生きている気がします。
気を遣うのは素晴らしいことだけど、
『迷惑センサー』が敏感すぎて、
皆、どこかびくびくしながら暮らしていると思うこともある。
自分の立場をわきまえるあまり、
行動範囲を自分で狭めてしまっていると感じることもあります」
なるほど。「迷惑センサー」。
確かに、考えてみたら「迷惑」というレベルではないことも、
大げさに捉えられていることが少なくない気がしますし、
そもそも、実際に「迷惑」かかってないよね?と思うこともありますね。
うーん、、、、。
もっと寛容になりたいですね、人にも、自分にも。
完璧じゃなくたっていい。
いつもデキる人でなくてもいい。
いつもいい人でなくてもいい。
私たち大人がそう思えないと、若い世代もなかなか変わっていけませんね。
腹をくくって、決断する
「チームとすれば本意ではないですけど、勝ち上がる中での戦略。
こういう形も成長していく中での一つの選択だと思います」
こう語ったのは、現在ロシアで行われているサッカーW杯で、
2大会ぶりに日本代表のグループリーグ突破を決めた西野監督。
本意ではないとしたのは、
28日に行われたポーランドとの試合で、
試合時間10分を残しながら、攻めることをやめ、
パスを回し続けたことについてです。
当然、これにはスタジアムの観客も大ブーイング。
私もテレビの前で「!!」となりました。
西野監督は、同時間に別会場で進行していた
同グループのセネガルvsコロンビア戦で、
コロンビアがリードしたとことを確認。
別会場がこのままのスコアで終わり、
日本もこれ以上失点しなければ、
グループリーグを突破できると読み、賭けに出たのです。
そして試合は監督の読み通りに終了。
日本は決勝トーナメントに進出します。
次に進めたとはいえ、やはり私は、
パスを回し続けて時間稼ぎをするサッカーを観るのは苦痛でした。
「おーい! 一生懸命戦えー!」と、
小声で(深夜ですから)叫んでしまいました。
でも同時に、
「へぇ、そんな大胆なことする監督だったんだ」と思ったことも事実です。
日本サッカー協会の相談役である川淵氏も
「西野監督は勝負師。もし裏目に出たら一生、批判を浴び続けることになる。
その覚悟を持っての決断。腹が座っている」
と評価しているようですし、
この日、出番のなかった本田選手も
「西野監督はすごい。僕が監督でもこの采配はできなかった」
と語っています。
今回のW杯は、監督も含め、
日本代表への期待はあまり大きくなかったと思います。
大会前に監督が交代していますし、直前の親善試合でも負けています。
大会前に西野監督が発表したメンバーも無難な選択という印象。
正直、盛り上がりに欠けるなと思っていました。
ところが、大会が始まってみると、
西野監督の采配は無難ではありませんでした。
メンバーの起用もそうですが、
ミスが続いていたキーパーの川島選手を外すのではなく、
次の試合でゲームキャプテンにするというのも驚きました。
そして、その采配が当たっているのです。
チームがうまくいっていると選手の表情も変わります。
インタビューを見ると、よりイキイキしているし、
自信を持っているように見えます。
西野監督は、モチベーターと戦略家としてのバランスが
すごくいいのかもしれないなあと思いました。
日本代表を2度指揮し、
現在はFC今治のオーナー経営者の岡田武史氏は、
強い組織をつくるためのリーダーに求められることについて、
こう語っています。
「自信を持って決断する。そのためには腹をくくること」
情報収集をして、最後は直感。
悩み、考え抜くけれど、
最後は自分の直感を信じて従うしかないと岡田氏。
「監督も経営者も孤独な仕事。
だからこそ、ある種の開き直りが必要。
高い志を持って、
リスクを犯しながらも必死に働くリーダーの後ろ姿を見て、
人はついてくる」
と話しています。
大ブーイングを起こした西野ジャパンのパス回しですが、
西野監督の強い決断がさらに選手をひきつけたのかもしれません。
「次は臆することなく戦う」と語る西野ジャパン、
強い組織のまま、進め、ニッポン!